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「場を開くアートの力」~BIWAKOビエンナーレ2012を巡って~

 2年前、初めて訪れた滋賀県近江八幡市で見た、古い町屋空間と現代アートが融合した質の高い芸術祭。あれから2年、その芸術祭が規模や出品作家を拡大し、5回目のビエンナーレを行うということで、会期終了2週間前に足を運んだ。日本家屋の光と闇を活かした芸術祭は、「今」と「昔」とを融合させたビエンナーレとしての洗練と、アートが可能にする場を開く力を感じさせるものだった。
120915biwakobiennale[1]前回の近江八幡エリアのみの展示から、五個荘エリアにも会場を広げ、出品作家数も70名以上と大幅に規模を拡大したBIWAKOビエンナーレ2012。2つの会場を1日で巡るのは難しいことから、2日間に分けて全17会場を巡ることにした。

初日に巡った近江八幡エリアでは、事務局もある天籟宮の蔵にあった大量の麻糸を垂らした空間に、光の映像を投影する作品(interweaveの「circle side」)に圧倒され、カネ吉別邸では、二階の空間を劇の舞台のような雰囲気に変えたTシャツを用いた作品(永井俊平の「おさまる」)や、旧中村邸奥の巨大な石のレプリカが室内に平然と佇む作品(友田多恵子のProfundity-2012)といった場の特性を活かしながら、それでいてその奥にある気配を引き出すような展示が数多く見受けられた。
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八幡山ロープーウェイを使って観に行く2つの会場以外、過去のビエンナーレで使われた会場と同じ町屋を使っているだけに、展示場所としては、すでに見覚えがあり、それほど驚きを感じることはなかった。しかし、作品自体のインパクトや、光と闇を巧みに活かした展示方法で、町屋空間の新たな魅力を引き出すことに成功していた。

日ごろ使われない古い町屋の中には、そこにある湿っぽく朽ちた感じから、おどろおどろしさを醸し出す雰囲気があった。そんな気配を作品内に取り込んで、現代アートという異物でありながらも、その場の雰囲気と融合し、何かそこにうごめくような気配を生み出している作品もあり、それらは、この時期、この会場に行かなければ観られないもののように思えた。
206_convert_20121102040728.jpg2日目に巡った五個荘エリアは、近江商人の古い家屋が、周辺の町並みと共に保存された地区で、このビエンナーレでもなければ、足を運ぶ機会がなかっただろうエリア。展示全体としては、「保存」が行き届いた現代に近い空間だけに、近江八幡エリアほど、古い町屋と現代アートといった遠く離れたもの同士が結びついたインパクトは少なかった。けれど、田中太賀志や、草木義博、越中正人やAWAYAらの作品には、時間と手間をかけて五個荘まで足を運ぶ魅力があったように思う。

しかし、五個荘エリアの展示で何より凄かったのは、これまでそれほど知られていなかった五個荘という地域で、そこにある近江商人たちの古い住まいと現代アートを融合させ、多くの人にその建物や街並みの魅力を発見させたことにあると思う。
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場を開くアートの力を最大限に活用し、これほどの規模と広がりをビエンナーレにもたらしたことで、これまで一部の人々にしか届かなかった芸術祭の魅力が、より多くの人々に認知され、一段上のステージへと進むことができたように思う。

2日間に渡り巡った2つのエリアでは、芸術祭を観るだけでなく、八幡山からの琵琶湖の眺めや、周囲の町並み、さらには古い寺社仏閣なども見て歩くことができる。今回のビエンナーレを巡るという目的で、そういった「BIWAKO」を背景にして生み出された歴史や文化を実感できるということが、BIWAKOビエンナーレ2012の最大の魅力のように思えた。

BIWAKOビエンナーレ2012ウェブサイト
会期が2012年11月4日(日)までと迫っています。興味のある方は早急に足を運ばれることをお勧めします。
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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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