スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
関連エントリー
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - スポンサーサイト
関連エントリー
関連エントリー

「アーティストとしての確信」~画家、ジム・ダインのレクチャーを聴いて~

 昨年から今年にかけてウィリアム・ケントリッジさん、シュテファン・バルケンホールさんといった日本の美術館で個展を開催できるクラスのアーティストの話を聴きに行く機会があった。彼らの話には、「さすがは世界的知名度をもったアーティスト」と思えるほどの優れた話や、作品についての独自の見解を彼ら言葉で聞くことができた。今回は4月23日から8月28日まで、名古屋ボストン美術館で展覧会開催中のジム・ダインさんの話の中にあったアーティストとしての確信について紹介したい。ジム・ダイン展ポスター画像

京都造形芸術大学の国際交流プログラムの一環として行われた今回のレクチャー。海外のアート状況を知るために、ぜひ聞きに行きいと思いながら、つい時間に遅れてしまい、到着した時には会場外にまで聴衆が溢れるほどの状況だった。結果、同時通訳用のイヤホンが足りず、かすかに聞こえてくるネイティブの英語を必死につかまえるような感じでレクチャーを聴き始めた。

だから同然、聞き取りにくい英語を追うよりも、背後に映されていた作品のスライドを見ることが多かったのだが、それらはスライドで見るだけでも、何かしら訴えかけてくるような、独特の構成力や色彩感覚が伝わってくる作品が多く、これだけの聴衆が集まる理由も理解できた。そんなダインさんが語った作品のことや、作家を目指す学生たちの熱心な質問への回答には、「アーティストというよりも自分自身である」ために歩んできた道程のことが率直な言葉で語られていた。ジム・ダインさんレクチャー画像

両親に連れられ6歳で見たディズニーの『ピノキオ』。母親が亡くなり預けられたシンシナティーの祖父母の家の金物店。そこにあった様々な工具に魅せられ、見よう見まねで使い方を覚えていった子供時代。学校では難読症という学習障害を抱え、「言葉を喋ることはできるけれど、言われることに答えることができなかった」。「普通のやり方では学べなかった」という孤独な学校生活の中で気づいたことは、「みんなと話す事ができなくても、外に出て駆け出していけばいいんだ」という事実だった。

そんな少年時代を送ったダインさんは、16歳で車の免許を所得すると、昼は仲間と悪さをするような生活を送りながら、夜にはそれまで自分が自由になれる手段として描いていた絵を学ぶためにアートスクールに通い出す。学べば学ぶほど、自分の中に、「ペインターになりたかった。アーティストになりたかった」という思いがあったことに気づいていき、さらにはシンシナティー大学、ボストン美術館芸術大学、オハイオ大学でアートを学び、「時間と場所を提供してもらって自分を育てていった」。ジム・ダインポスター画像1

美術界で最初に評価されたハプニング。そしてアンディ・ウォーホールやロイ・リキテンスタインらとポップアートとして評価された時も、自分がやったことがアートとは認められなかったことや、何かの枠組みに括られることに違和感があった。そんな日々の中で、さらに自分を磨くために、67年から71年まで、自分にとって帰属意識のなかったニューヨークのアート界を離れ、「もっと希望を持つことができる社会」と感じたロンドンで版画制作に集中し始めた。

金づちや刷毛といった工具やバスローブなど身近な素材を主題にすることについて、「何か手放したくない。道具として惹かれたたりする時があって、テーマのバリエーションとして生まれたアイデアを無駄にしたくないと思うんです」と語ったダインさん。作品に込められた思いを「ツールは代理として使っていて、それは私の人生を道具として表しているのであり、その意味は変遷していくということ」と率直な言葉で語った。ジム・ダインポスター画像2

聴衆の大半である学生たちに向かって「アーティストには信念が必要です。表現はこうすべきと思った時にするもので、自分で自分のすべきことに責任を持ってやらなければならない」と落ち着いた口調で話した姿には、「アートはいつも空っぽの空間から私を救ってくれた」というアートに対する感謝の思いや、「何でも自分の手で作り出すことが可能だと思っている」というアーティストであり続けてきたことに対する誇りのようなものが感じられた。

学生たちに尋ねられた制作に関する質問に、「(彫刻では)早く制作した時に失うものもあり、テクニックにいきすぎるのも駄目。だから色んな心配をして一つずつやっていくのもいいが、歯医者のドリルをを使うとタッチに軽さが生まれる。ブロンズや木ではチェーンソーを使っている」といった回答や、「(色は)あまり意識して考えてはいない。そのものに対して適切だと思う色を使っている。言葉と一緒でツールだと思っているから色について論理を持っている訳ではない」と現在の制作が感覚を重視したものであることを説明した。ジム・ダインさん画像

レクチャーの半分以上の時間が会場からの質問に充てられ、果たしてそれだけの質問が聴衆から寄せられるかという心配をよそに、学内の教員の方に始まり、質の高い質問を投げ掛けた学生たち。その様子には、明治時代、お抱えの外国人教師から少しでも多くの知識を引き出そうとする日本人学生ような真剣さを感じさせた。そんな学生たちへの最後の言葉として、「アーティストとして挑戦し続けなければならない。やるべきと思ったことはやるんです」と力を込めて語った75歳の老芸術家の姿は、先人として少しでも多くのことを若者たちに伝えたいという迫力に満ちていた。

ウィキペディア ジム・ダイン
ジム・ダイン-主題と変奏が開催中の名古屋ボストン美術館のウェブサイト
ウィキペディア 学習障害
ウィキペディア アンディ・ウォーホール
ウィキペディア ロイ・リキテンスタイン
アマゾン 「ポスター ジム ダイン The Philadelphia Heart」
アマゾン 「ポスター ジム ダイン The Red Bandana」 限定作品

【関連記事】
「枠組みが決める場の思考」~建築的視点で見るBIWAKOビエンナーレシンポジウム~
「時空を越えた希望の光」~『魔法少女まどか☆マギカ』11話、12話を観て~
「一次情報で知る被災地」~宮城県仙台市で被災した渥美勉さんの報告を聴いて~
「喪失の先にあるもの」~東浩紀さんが出演したニコ生トークセッション いま、「キャラクターと日本人」を考えるを観て~
『魔法少女まどか☆マギカ』に見る文化の同時代性
「いま、日本社会で何が起きているのか」~問い直しと自己決定の時代に~
「開いた心に映るもの」~『ハーブ&ドロシー』佐々木芽生監督トークショー@奈良~
「震災の日のこと、その他」~横浜・寿町のアートプロジェクト「寿お泊りフォーラム」で体験したこと~
「剥き出しのリアル」~Chim↑Pom(チンポム)エリイさん卯城竜太さんトークを聴いて~@京都嵯峨芸術大学
セカイ系犯罪を生む閉塞感~ニコ生「秋葉原事件とは何だったのか」を観て~
拡張現実としての萌え~『らき☆すた』聖地鷲宮神社を巡礼して~
「反フラット化としての土着性」~北川フラムさん講演@琵琶湖高島「風と土の交藝」プロジェクト~
スポンサーサイト
関連エントリー
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - 「アーティストとしての確信」~画家、ジム・ダインのレクチャーを聴いて~
関連エントリー
関連エントリー

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

全記事表示リンク
全ての記事へのリンク(ジャンル別)

全ての記事を表示する

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
ユーザータグ

京都 歴史 アニメ 映画 秀作 動画 日本 美術 洋画 古典 講演 現代美術 傑作 ギャラリー  YouTube 舞台 京大 建築 江戸時代 探求 イベント マンガ 庭園 大阪 寺社 寺院 物理 宇宙 アート 監督 紅葉 美術展 ラブストーリー 奈良 国宝 ノンフィクション グルメ フランス 見学 時代劇 アクション 音楽 ドキュメンタリー  タイトル 世界  歌舞伎 押井守 仏像 攻殻機動隊  涼宮ハルヒ I.G 神山健治 くせになる 悲劇 博物館 鎌倉時代 東京 Production Youtube 解説 戯曲 魔術 リアル 詩情  前衛 広島 芸術 化物語  戦争 菩薩 お寺 離宮 仙人 茶室 医療 西洋美術 個展 香港 デザイン 皇室 絵画 邦画 テレビ 枕草子 漢詩 闘病 原作 宮崎駿 旅行 長谷川等伯 IG シェイクスピア 講演会 滋賀 トークショー 狩野探幽 海外文学 出会い 洋楽 日本画  祭り 荒唐無稽 中国 ジャンル   ニコニコ 二次制作 報告 肖像画 和歌 探求京大 思想 ヨーロッパ 印象派 ゲーム 手塚治虫 笑い 

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
フリーエリア
FC2 Blog Ranking 人気ブログランキングへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。