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「微妙さの魔力」~梅田哲也『はじめは動いていた』展@ARTZONEを観て~

少し前から、若い作家たちの傾向として、女性作家たちが創る一定の安定感やまとまりのある作品と、男性作家たちが創るまとまりがなく、カオス的な作品という大まかな区分けが自分の中にあった。震災の少し前までは、どちらかというと美的な感覚も味わえ、安心して見れる女性作家の作品に魅力を感じていたが、「問い直し」といったキーワードが明確になり、震災という未曾有の危機が訪れた後には、男性作家の内面と呼応した「荒れ」のある作品に惹かれている自分がいた。4月24日まで京都の三条河原町-木屋町の中間にあるARTZONE(アートゾーン)で開催中の梅田哲也さんの個展にも、そんな「荒れ」の感覚があり、またその「荒れ」を含む「微妙さの魔力」について紹介したい。『はじめは動いてた』展ちらし画像1

昨年のULTRA AWARD2010の展示を観て以来、今後、京都造形芸術大学が運営するARTZONEが、京都のアートの中心の一つになり得るかもしれないと、何となく思い始めた。以後、展示やイベントがある度に、極力足を運ぶようにしていたARTZONE。今回の梅田哲也さんの個展では、ギャラリースペースだけでなく、30年前に建てられたVOXビルという6階建ての建物全体を使った展示と聞き、何かいつもとは違うものが見れるのではという気持ちで会場を訪れた。

twitterでの情報通り、通常は入口となる扉の前には、まるでちょっとした資材置き場のように自転車や工具箱、使用済みの木材やブルーシートが置かれ、そこからの入場はできないようになっている。今回の入口は、その右側にある通路を抜け、通用窓口のような場所で学生スタッフから案内地図を貰って「探検」が始まる。すぐ横にあるエレベーターで3階に行き、扉が開いた右前の、製氷機が置かれた暗闇にあるのが1つ目の作品。何か黒い毛虫のような砂鉄の塊が、一定の円を描き続ける作品は、ビル内の飲食店で働く人々が出入りする場所で、周囲の雰囲気にすっかり溶け込みながら、ちょっとだけ自己主張している感じが面白い。『はじめは動いていた』画像2

壁に貼られた水色のテープを辿りながら、飲食店の通路やその裏にある階段を歩いて行くと、そこにはフィギュアを使ったディスプレーや、ビル内で使われなくなった椅子や看板が置かれており、それらとキャプションも何もない今回の展示作品との区別がつかなくなっていく。果たしてどれが作品で、どれが作品でないのか。店舗裏という限りなく日常に近い非日常と、アートという概念が作り出す非日常。それら2つが微妙に交じり合った「展示空間」では、当り前のものが当り前に見えなくなっていく。

そんな宙ぶらりんな感覚がするビル探訪の一つのクライマックスが、6階の扉を開けた先にある屋上の風景。河原町、木屋町という若者が集う繁華街や、緑に包まれた東山を日頃とは違う角度から眺めていると、世界にはまだ自分の知らなかったことが無数にあるように思えてくる。屋上に「展示」された幾つかの作品は、自転車の車輪を使ったデュシャンのレディ・メイド的な、既存のものを再構成したものではあるが、そこには、芸術の意味を問うようなデュシャン的狙いはなく、感覚的追求の先にある表現自体の問い直しといった視野の広い問い掛けがなされているように思えた。『はじめは動いていた』画像3

今度は黄色いテープに導かれ、一気に2階のARTZONEスペースまで下りて来ると、そこには日頃は奥のスペースに隠されたスタッフルームが剥き出しとなって現れる。今回の展示のテーマの一つであろう裏と表の反転というものを象徴した空間内には、日頃は裏にあるはずのスタッフルームが表となり、作品たちはどれも、扉の奥や脚立を上った壁の裏側に置かれ、モーターや光を使った循環運動を繰り返し、ささやかな自己主張を続けていた。

本来なら最初に入るはずの1階スペースでは、時折、気まぐれな感じで上下に移動する宙吊り作品、吊り上げられることを放棄したような和式の照明器具、屋上のインターホンと繋がりはするものの、実際につながることは難しい室内電話など、一つひとつに現代社会の困難さを思わせる微妙な仕掛けが見て取れた。今回の飲食店の店員でもなければ決して巡ることはないだろう通路や階段、そこから見た風景や作品。そして、まるで作品のように思われた様々なものたち。これら実は、作られた当初、その意味性や役割がまだ揺らいでおり、『はじめは動いていた』のだろう。『はじめは動いていた』画像1

しかし、時を重ね、ある一定の役割を繰り返してきたことで、いつしか自身にも、そして観る側にも固定観念のようなものが張り付き、「動かないもの」となってしまっていったのだろう。それを今回の展示では、日常と非日常が微妙なバランスを保った空間をビル全体に生み出すことで、「動かないもの」に張り付いていた固定観念を剥ぎ取り、人々の目に『はじめは動いていた』ものの存在を浮かび上がらせた。

展示を観終わり、ビルから外に出た後にも、街に溢れた『はじめは動いていた』ものたちに秘められた、もの自体の、まだ囚われていない「揺れ」のようなものが気になって、様々なものを立ち止まって観ることになった。そしてそんな立ち止まりの中で気づいたことは、『はじめは動いていた』はずなのに、いつしか社会的役割や固定観念といったものに囚われて、「動かないもの」となっていた自分自身に姿だった。

京都造形大学が運営するartzoneのホームページ
ARTZONE STAFF blogの梅田哲也さん個展のカテゴリー
ARTZONEのtwitter
梅田哲也さんのブログ
ULTRA AWARD2010を紹介したウェブサイト
ウィキペディア マルセル・デュシャン

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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