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「開いた心に映るもの」~『ハーブ&ドロシー』佐々木芽生監督トークショー@奈良~

 「芸術やアートがより人々の身近になっていくこと」。そんな思いを抱きながら、アーティストやアート周辺の人々の話を聴き、文章を書いていると、時としてアートの世界でなければ決して出会えないような人々とのつながることができる。そんな出会いの一つだった佐々木芽生監督のトークと、その後行われた交流会。特に交流会では、佐々木監督自身と、より身近でフラットに話すことができる貴重な機会だった。「自分らしく生きられる」というニューヨークで、23年間暮らしてきた佐々木監督の話を、ある個人というフィルターを通して伝えてみたい。「ハーブ&ドロシー」の佐々木芽生監督トークショー

昨年冬、大阪であった伝書鳩プロジェクトというイベントで、圧倒的なプレゼン力を見せたやまもとあつしさんが活動の拠点を置く奈良。秋にあった奈良アートプロムの野村ヨシノリさんなど、面白い人々がユニークな活動を行っているこの地で、今回はアート業界を中心に話題となったドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー』の佐々木芽生監督を招いてトークショーを行うという。まだ見ていない映画だし、わざわざ奈良までという気持ちがあったが、やまもとさんからちらしが送られて来たこともあって足を運んだ。

佐保川沿いの桜並木を、家族連れと共に歩きながら、散りゆく花びらに、震災で亡くなった人々のことを思った昼下がり。奈良図書情報館の「七個のアングル」という展示を見て、その後向かったならまちセンター。少しおくれ入った会場では、すでに野村さんによる奈良アートプロムの報告会が行われており、「参加アーティストが自分たちで展示場所を見つけて来て、90会場以上になった」という手作り感と真剣さが溢れたイベントことを思い出した。手短な報告が終了し、早速始まったトークでは、佐々木監督が、2002年にヴォーゲル夫妻との初めて出会い、二人のことを聞いた時の話から始まった。佐々木監督トーク画像1

「心臓が止まるほど感動して、この話を伝えたいという気持ちでいっぱいだった」という二人の外見は、普通のおじいちゃんとおばあちゃん。しかし彼らこそ、大金持ちのコレクターと肩を並べるほどの優れたコレクションを持ち、「デザイナーズブランドに身を固め、シャンペンやワインを片手にしているようなアートの世界で、間違って入ってきちゃったような普通の格好をしながら、その中の中心人物」というヴォーゲル夫妻だった。「最初は半年ぐらい追いかけて30分ぐらいの小さな映画ができたら」という感じで撮影を始めたが、知れば知るほど「とんでもないコレクターだ」ということを理解。結局は様々な困難を乗り越え、4年の歳月を撮影に費やした。

現実的には資金面、作品的には「一般的な質問をしても、気に入ったとか、いい色だからとかいうシンプルな答えしか返って来ない」という制作上の問題に直面するが、知人のアーティストに相談すると、「だから凄いんだよ。アートは本来、見て楽しむものだから。二人が作品を目の前にした時、どういう風な目をしているのか注意してごらん。僕たちにはほとんど見えていないものがきっと見えてくるから」と教えられ、彼らの姿を言葉で伝えるより、映像で表現していこうと覚悟が決まった。ハーブさん画像1

郵便局員として働いたハープと、図書館史書として働いたドロシーのコレクションの保管場所は、彼らが結婚当初から住み続けているニューヨークの小さなアパート。至る所に作品が積み上げられたその空間には、約30年間、二人が収入の半分を注ぎ込んだ膨大なコレクションで埋め尽くされている。そんなアパートに通い続け、時にはカメラを回し、時にはご飯を食べ、家庭の細々とした雑用を手伝うなど、長い時間を共有した佐々木監督は、徐々に二人の信頼を獲得。これまで誰にも見せることがなかった、作家のスタジオを訪れ、作品の購入する場面の撮影を許されるまでになった。

「自分の親以上に旅行のスケジュールを報告しなきゃいけなくて、日本にいる間もメールが5通ぐらい来る」という関係が今も続く、佐々木監督とヴォーゲル夫妻。交流会で聞いた話では「おじいちゃんのハーブの方の健康状態が少し心配で、もしかしたら見てもらえないかも」ということもあり、作品の完成を急いだという。「こういう風な生き方とか、増えていったら面白いな」。そんな思いを込めて、日本での上映を配給会社に打診。しかし、映画業界の厳しい現状や、「有名人も出ていない現代アートの作品」ということもあり、どの会社からも良い返事は来なかった。佐々木監督交流会画像

配給の目処が立たない中、制作同様、初めてとなる自主配給での上映を決定。「広告費を使わずに、見て欲しい人にどうやって届けようと真剣に考えた結果、twitterやmixi、さらには文化教室に行ったり、口コミで熱く語ってくれる人々を探し、思いを集約するためのありとあらゆることをやった」。その結果、東京で30年の歴史を誇るミニシアターの歴代2位の観客動員数、全国50館近い上映を実現するなど、これまでにはない形で人々を巻き込む流れを生み出した。

トーク後の交流会では、「アートの見方は変わりましたか」という質問に、「心を開いて作品に触れることが一番大切。この作品何か凄いとか、心に刺さってくるものがあるかだけなんです。それは周りが好きとか、みんながいいと言うからじゃなくって、自分にとって刺さるか刺さらないか、それだけ。考えてもいいけれど最終的には分からないし、説明しようとすればするほど離れていく」と回答。お酒を交えての、参加者との会話の中では、「この映画はお金にはならなくても、人とのつながりが生まれ、色んな人に出会える。それぞれの思いで見てもらって全然いいので、これをきっかけに人と人とがつながり、話をしてくれれば」と作者としての思いを込めた。『ハーブ&ドロシー』画像3

東京で仕事をしていた時に体を壊し、それが切っ掛けとなって様々な国を旅しながら辿り着いたニューヨーク。手元に20ドルしかなかった旅の途中の、「住む予定じゃなく、成り行きで居ついてしまった」という街で長年、ジャーナリストをしながら世界の国を旅してきた。そんな佐々木監督が「コレクターという以外は普通のアメリカの、普通の家族の日常でしかないのです」という二人の物語を映画化したのは、日常の中のにある夫婦や友人関係、アートといった趣味に対する思いこそが、人の心を豊かにし、幸せをもたらす近道だと伝えたかったからかもしれない。

『ハーブ&ドロシー』のウェブサイト
『ハーブ&ドロシー』のtwitter
佐々木芽生監督のtwitter
やまもとあつしさんのtwitter
奈良アートプロムのホームページ

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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