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「一次情報で知る被災地」~宮城県仙台市で被災した渥美勉さんの報告を聴いて~

 「地震のあと20分ぐらいで津波が来た」。3月11日、宮城県仙台市の実家に帰省していた立命館大学産業社会学部の渥美勉さんは、食器棚など様々なものが倒れ、めちゃくちゃになったマンション9階から海沿いの平地に津波が来るのを見たという。テレビや新聞、さらにはネットで知る二次的な情報よりも、実際に震災を体験した人の声が聴きたいと思い出掛けた、「故郷が被災地になった」という被災学生の報告会。20名ほどが参加した集まりで聴いた話には、メディアの情報からこぼれ落ちた様々な事実があった。渥美さん報告会画像2
今回の報告者、渥美勉さんとは、BIWAKOビエンナーレの学生ボランティアリーダーをしていた渥美さんに、リサーチの一環として話を聴いた時に知り合った。決して押し出しの強いタイプではないが、その分、一歩引いた視点から客観的にものを見ることができる人として強い印象を残した。そんな渥美さんから被災地の報告会をしますという連絡が来たので、それならきっと彼なりの視点から見た話が聴けるだろうと、立命館大学まで足を運んだ。

各校舎に小難しい名前のついた立命館大学の、かなり目立たない場所で開催されていた会場を探すのに手惑い、開始から少し遅れて入った報告会では、すでに渥美さんが自分で撮った被災地の写真を紹介しながら、現地の状況を説明していた。「津波のストッパーみたいになった高速道路の土手を境にそこから先は別世界になっていた。家から高速まで1キロぐらいの歩ける距離で、海側に行けば行くほど船や瓦礫が流されていて、家の形もなくなっていた」。報道写真全記録2011.3.11-4.11

1階が崩れ落ちたり、壁が剥ぎ取られている写真に写る地域では、農業や漁業といった第一次産業に従事している人がほどんどで、避難所に高齢者が多い理由はそのせいだという。若者のほとんどは仙台市街地に住んでいるという実態は、日本全国の過疎高齢化の状況をそのまま反映したもので、そこに津波が襲ってきた。ほとんどが一軒家という家々が、無残にも破壊され、瓦礫にまみれているのを見ると、被災された方々より若い自分にさえも、簡単に復興と言えない気持ちになった。

震災後ほぼ3週間が過ぎていたこの時期でも、「石巻、女川が悲惨で、マスコミも入れないような所もあって、支援のレベルに地域格差がある。アクセスの良いところにはすぐに支援が行くけれど、沿岸部の被害が酷いところほど支援の手が届かない」という現実があった。また同じ地域の人々にも、「避難所には行きたくないという理由で、被災した自宅の2階で生活する家族がいたり、車もなく、物資から遠くなったり、場所による産業や生活スタイルが違ったり」と被災者という言葉で一括りにできない現状があった。渥美さん報告会画像3

「大丈夫と言っていた人でも、本当に大丈夫とかは信じない方がいい」という渥美さんの言葉には、「親戚が死んでたり、家がなくなっているのが普通になってくる」という被災者独特の心理状態があると言う。「僕なんかは自分より大変な人がいるっていうのがあるし、喋ること自体凄く迷ってて、でも凄い体験をした人の話をする気にはなれなくて、覚悟を決めて腹を括れたらというのはあるけれど、まだどこまで話すかの線引きは難しい」という迷いのなかで臨んだ報告会なのだという。

個人的体験としては、「電気がつくまで4日間ぐらいかかって、ポンプで水を汲み上げるマンションでは水道が出ないので、口コミで伝わってきた水が出る公園に行って、タンクやペットボトル、ポットとかに水を入れて持ってきていた。電気が通った時にはブレーカーを落としてない家なんかで漏電火災が起こっていた」など知識としては知りつつも、実際、体験した人から聞く話には重みがあった。食料についても、「食べ物が無い時期はお菓子とかチョコレートとかで空腹を満たすような時期もあったけど、3日後ぐらいにはお店が開き、一週間ぐらいではスーパーも短縮時間で営業を再開していた」という状況だったという。『地震イツモノート』画像

「今回はソーシャルメディアが活躍したみたいな話もあったけれど、電気がなくなったら人しか頼るものがない。だから最終的には人です。あと電気に依存してきたから、電気が駄目になることがあって電気に対する信頼が揺らいだ。電気がなくてもできることが有難かったし、たくさん電気がなくても暮らせる暮らし方があるんだなとも思った」という意識の変化は、祖母の家に親戚一同で避難し、カセットコンロで調理した食料を一緒に食べていたという生活を送った渥美さんだけでなく、被災地や計画停電、さらには原発問題を抱えた多くの日本人にとっても広まっていく感覚なのかもしれない。

参加者の「何かできないか」という気持ちもあり、最も質問の多かったボランティアについては、福祉施設を手伝った体験を踏まえ、「行政のシステムが回っていないという部分も多かった。ニーズの把握やボランティアに何かしてもらえるという意識がなかったりで、色々と捌ききれていなかった」と物資の分配やボランティアの受け入れに緊急時の柔軟さが欠けている面があったという。キリスト教係の団体が、すでにあるネットワークを生かして素早い対応をしていた点を挙げながら、「行政を過信し過ぎてはいけない」と語った言葉には、福島原発の情報開示などにも通じる市民視点を欠いた行政への失望感が伺えた。立命館大学外観

「潮の匂いや下水の匂い、油の匂いで日が経つにつれて臭くなっている」という現地と、大学のある関西に戻ってきた時に感じた、「空気感が全く違う」という感覚。阪神・淡路大震災もあって被災地への関心も続いていると思っていたのに、人々の関心はすでに原発問題に移っており、「まずいな」と思ったのだという。「一番元気な関西が関心を示して欲しい」。そんな思いで話をした約2時間の報告会の最後には、「あきらかに数年ぐらいで元に戻るとは思えなくて…」と故郷をはじめとした広範囲に及ぶ被災地の、「復興」への険しい道程をつぶやくように語った。

「普通に働いていることや、ご飯を作ってたべることがどれほど凄いことか」。崩壊してしまった日常の先に続く震災前とは異なる「日常」。そんな「日常」が続いて行く日々の中で、多くの被災者に再び元の生活に近い日常を取り戻して欲しいと、現在は仙台に戻り、石巻など最も被害の深刻な地域でボランティア活動を続ける渥美さん。地震や津波で亡くなった人々のことを含め、一人ひとりの背後にある人生を思いながら、自分にできる何かを提供していくことが、これから長く続く復興への道程に最も重要なことだと思った。

立命館大学のウェブサイトで紹介された「故郷が被災地になった-被災学生による報告会-」
報告会で被災地について語った渥美勉さんのtwitter
アマゾン 『報道写真全記録2011.3.11-4.11 東日本大震災』
アマゾン 『地震イツモノート』 (ポプラ文庫)

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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