スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
関連エントリー
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - スポンサーサイト
関連エントリー
関連エントリー

「震災の日のこと、その他」~横浜・寿町のアートプロジェクト「寿お泊りフォーラム」で体験したこと~

 震災以降、周囲の人々に色々なことを話しても、なぜかブログやtwitterで言葉や文字を書くモチベーションが上がらなかった。決してそれは、震災だけの問題ではなかったにしろ、何かしら震災や原発といった、これまで予期しなかった現実が、自分の上にもそれなりに覆いかぶさっている証拠なのだと思う。主催したトークイベントの準備などもあり、約1ヶ月、放置していたブログを再開するにあたり、まずは、3月11日に自分の身の回りに起きたことを振り返ることからはじめてみたい。寿お泊りフォーラム画像1

3月11日に降り立った横浜の街は、日産自動車本社ビルが象徴するような、ある種の近未来性を持った街でもあり、またある種、バブル崩壊後の日本社会の姿が、はっきりと刻まれたような明暗の入り混じった場所だった。特に横浜美術館で開催されていた高嶺格(たかみねただす)さんの『とおくてよくみえない』展を観るために歩いた「みなとみらい21」のエリアは、バブル期に埋め立てられた閑散とした空き地と、所々に立つ高層ビルの対比が今の日本のリアルとしてビリヒリと迫ってきた。

今回の関東巡りは、ここ数年来注目してきた「貧困」と「孤立」という今の日本の社会問題に、アートがいかに介入できるかという一例として試みれられている横浜・寿町のアートプロジェクトの一環、「寿お泊りフォーラム」に参加するためと、10周年を迎えた『GEISAI』を訪れ、そこに生まれた祝祭感が一体どんなものかを実際に体験することが主な目的だった。また、今年は横浜トリエンナーレが開催されるであろうこの街の、事前の雰囲気を味わえるかもしれないという期待もあったが、これといった盛り上がりを感じさせるものはなかった。横浜美術館画像2

高嶺展を鑑賞し、正午前に迷いながら辿り着いた寿の町は、確かに他の土地と地続きなのだけれど、日本というより微かにアジアを感じさせる異質さが漂っていた。しかし、集合場所となったかながわ労働プラザには、会場案内の表示など一切なく、どうにか辿り着いた8階会議室でも、わざわざ京都から遠出して来るイベントではなかったかもという気の抜けた説明が行われるばかりで、思わず涙目になってしまいそうな心細さを感じた。唯一の救いは、ゲストとして参加されたアーティストの藤浩志さんに声を掛けていただき、300円という驚異的な値段のランチを食べながら、いわゆるドヤ街と言われる地域で行われているアートプロジェクトの現状を教えてもらえたことだった。

昼食を終え、事前申し込みに従って分けられた2つのグループの一つとして行った炊き出しのボランティアでは、学生を中心とした15名ほどの参加者と共に、具沢山雑炊のような食事の注ぎ分けや、食器洗いを行った。目の前で向かい合う疲れを感じさせる目をした人々に気を配る暇もなく、次々に注ぎ分けていく雑炊。すでに18年間も続いていて、配る方も受け取る方も一定の手順が決まっている炊き出しは、変な同情心や感情のもたれあいのようなものがなく、最初は戸惑いを覚えたけれど、それは長く続いてきた関係として逆に強い信頼関係のようなものがあるのかもしれないと思えてくるのだった。寿町町並み風景画像2

交代した洗い場では、共にボランティア初体験となる学生や若い女性アーティスト、近隣のポランティアの方と共に、押し寄せてくる食器をシステマッテックにさばいていくことが心地よく。ボランティアというものにちょっと抵抗があった自分にも、その流れの中に入れば自然と体が動いてしまうような心地よさが感じられた。地域アートに関連した人々の間では名の知られた曽我部昌史さんの神奈川大学研究室が設計した炊き出し会場の公園は、遊具の高さや配置に炊き出しの人々の意見が取り入れられており、水周りの排水や人々の立ち位置など、ジャングルジムのような骨組みだけではあるけれども、その使い勝手の良さに驚かされた。

一通り炊き出しが終わり、ボランテイアの人々と共に味わった具沢山雑炊は、大抵のものは残さず食べる自分にも、癖を感じさせる米や具は食べられても、スープといわれる汁の部分は、完食しようにも、体が受け付けないような独特の味わいがあり、申し訳ないと思いながらも残飯受けに流してしまった。横で2杯目や3杯目平らげていた人々の中にも、かなりの数、汁を捨てていた人がいたのを見ると、あの汁は多くの人にとっても完食は難しいのかもしれないと思った。寿公園模型画像2

公園すぐ横の、古い鉄筋5階ほどの建物の2階で、炊き出し後のレクチャーを受けることになった参加者は、50分間で672食が配られた雑炊の具財の種類や仕入れ先。「バブル崩壊で経済的基盤を失い、仕事や住むとこを失った人々が、路上に出るしかなかった中で、寿老人クラブの会長が、『見ておれんから炊き出しでもやらんか』というのから始まった」という93年から18年間続く炊き出しの歴史や、「孤立して人が生きている状態を改善し、人がメシを食えない状況にあるのを一緒にメシを食うことで考えよう」という目的について、「寿炊き出しの会」の近藤昇さんから話を聞いた。

近藤さんの話は、その後、自分たちの無策が生み出した目の前の現実から目を逸らすために、数字的な誤魔化しを続ける行政の話などに続いていき、第二次大戦以前から、面子や体面ばかりを気にし、現場の声や人命を疎かにしてきたこの国のあり方が、形は違えど今だに続いていると思わせるエピソードが語られた。レクチャーもほぼ終わり、炊き出しに参加した全員での報告会に話が移りだした時、最初は「あれっ?」と思わせるような細かな揺れが室内に伝わった。その揺れは普通なら終わるはずの時間が来ても、全く衰える気配はなく、むしろ次第に強くなり、机の下に半身だけ身を隠した自分にも、16年前に京都で体験した阪神・淡路大震災を思い起こさせるほどのものになっていった。復刊アサヒグラフ 東北関東大震災画像1

室内の人々はそれぞれの判断で野外に避難する人、室内に留まる人に分かれたが、建物自体が倒壊するかもというほどの揺れの中、不用意に外に逃げ出したものか、揺れが収まるのをそこで待つか、横にいる人々とどっちつかずな体勢で話し合う以外になかった。地震体験装置の中に取り残されたような状態が続く中、誰からともなく、炊き出しをしていた公園へと移動し始め、その流れに従った。防災施設としての炊き出しにも対応できる公園に集まった人々は、さっきまでいた古い建物が今だに揺れ続け、自分が寄って立つ地面さえもが、海上に浮かぶ船のように不安定な揺れにさらされているのを、動揺や不安を口にしながら見守るしかなかった。

約1分半ほどの長い長い揺れが収まり、不安ながらもとりあえずは、危機を脱したと感じた人々は、自分がいるところよりも強い揺れや、もっと酷い被害を受けた場所があるのではと、携帯のワンセグ機能や、どこからか取り出してきた小型ラジオを手に情報収集を始めていた。震源が宮城沖という情報が、参加者や公園に集って来た人々の中に広まると、そこに家族や知人のいる人々が、不安気に携帯を手にし、電話を掛け続けていた。しかし、どうやら電波の届かない状態にあるらしく、それらの人々はもどかしそうに携帯を握り、地震情報の流れるラジオに耳を傾けていた。寿屋上写真画像1

今回のイベントや、寿でのアートプロジェクトを一から始めた河本一満さんの周囲に集った参加者は、その後行われる予定だった寿の町歩きを、公園でじっとしているのも何だからという感じで行うことになった。当初は、数人づつのグループで行く予定だったガイドツアーは、多くのドヤ街の人々が通りに出て、完全に非日常化している状況だからと全員が一つのかたまりとなって、ドヤの屋上や廊下の壁に描かれた作品、昭和の面影を残す建物や売店を巡りながら歩いた。時折余震を感じ、遠くには火災の黒煙や、救急車のサイレン音が聞こえる中で巡る寿の町は、まるで現実から浮き上がったようなかすかな興奮を人々にもたらしているようで、屋上に描かれた作品を見ていた参加者に向け、興奮気味に罵声を浴びせる年配の男性の声が、町の喧騒と一体となり、遠くまで響いていた。
(後日掲載の『それから、翌日の話』に続く)

ウィキペディア 寿町(横浜市)
寿お泊りフォーラムのウェブサイト
ウィキペディア GEISAI
ウィキペディア 横浜トリエンナーレ
ウィキペディア ドヤ街
曽我部昌史さんが所属するみかんぐみのウェブサイト
ウィキペデイア みかんぐみ
ウィキペディア 阪神・淡路大震災
アマゾン 『復刊アサヒグラフ 東北関東大震災』2011年 3/30号 [雑誌]

【関連記事】
「生き延びるアートフェスティバルになるために」~地域系アートプロジェクトの課題~
「廃都」和歌山のリアリティー・前編
「剥き出しのリアル」~Chim↑Pom(チンポム)エリイさん卯城竜太さんトークを聴いて~@京都嵯峨芸術大学
「ギャラリストの視点」~京芸卒展をみたNamさん(0000)のつぶやきと実際の展示を観て~
セカイ系犯罪を生む閉塞感~ニコ生「秋葉原事件とは何だったのか」を観て~
拡張現実としての萌え~『らき☆すた』聖地鷲宮神社を巡礼して~
「次世代型!クロスボーダーアーティスト、スプツニ子!」@京都精華大
「反フラット化としての土着性」~北川フラムさん講演@琵琶湖高島「風と土の交藝」プロジェクト~
戦場の白い旗~森村泰昌 なにものかへのレクイエム自作解説と展示を観て~
「戻って来ない伝書鳩」~中之島4117という大阪市のアート支援センターが主催したイベントに参加して~
スポンサーサイト
関連エントリー
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - 「震災の日のこと、その他」~横浜・寿町のアートプロジェクト「寿お泊りフォーラム」で体験したこと~
関連エントリー
関連エントリー

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

全記事表示リンク
全ての記事へのリンク(ジャンル別)

全ての記事を表示する

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
ユーザータグ

京都 歴史 アニメ 映画 秀作 動画 日本 美術 洋画 古典 講演 現代美術 傑作 ギャラリー  YouTube 舞台 京大 建築 江戸時代 探求 イベント マンガ 庭園 大阪 寺社 寺院 物理 宇宙 アート 監督 紅葉 美術展 ラブストーリー 奈良 国宝 ノンフィクション グルメ フランス 見学 時代劇 アクション 音楽 ドキュメンタリー  タイトル 世界  歌舞伎 押井守 仏像 攻殻機動隊  涼宮ハルヒ I.G 神山健治 くせになる 悲劇 博物館 鎌倉時代 東京 Production Youtube 解説 戯曲 魔術 リアル 詩情  前衛 広島 芸術 化物語  戦争 菩薩 お寺 離宮 仙人 茶室 医療 西洋美術 個展 香港 デザイン 皇室 絵画 邦画 テレビ 枕草子 漢詩 闘病 原作 宮崎駿 旅行 長谷川等伯 IG シェイクスピア 講演会 滋賀 トークショー 狩野探幽 海外文学 出会い 洋楽 日本画  祭り 荒唐無稽 中国 ジャンル   ニコニコ 二次制作 報告 肖像画 和歌 探求京大 思想 ヨーロッパ 印象派 ゲーム 手塚治虫 笑い 

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
フリーエリア
FC2 Blog Ranking 人気ブログランキングへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。