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「反フラット化としての土着性」~北川フラムさん講演@琵琶湖高島「風と土の交藝」プロジェクト~ 

 中、小アートフェステッバルの成功条件をリサーチするために訪れた「風と土の交藝」というイベント。目的の一つは、イベントを体験し、そこに含まれる様々な要素を、依頼されている「BIWAKOビエンナーレ解析プロジェクト」に活かすこと。そしてもう一つが、関連行事として行われた北川フラムさんの講演を聴き、地域とアートの関係や、その可能性をつかんで今後の地域アートの方向性を見極めることだった。今回は、越後妻有や瀬戸内国際芸術祭といった日本を代表するアートプロジェクトを成功させてきた人物が語った、様々な物語とその核心を伝えてみたい。風と土の交藝画像2

これまで芹沢高志さんや藤浩志さん、永田宏和さんなど中小規模のアートプロジェクトの中心人から、特にアートやアーティストの側面から数々の貴重な話を聴くことでできた。しかし、今回の北川フラムさんの話では、作品の話は出てきても、アートやアーティスト的な話はほとんどなかった。今回のイベントがアートではなく、「交藝」色の強いものであったとしても、そこで語られたことの大半は、越後妻有や瀬戸内の歴史や、そこで暮らす人々の生活に生まれた変化だった。特に序盤は越後妻有の地理的条件や、歴史的変遷のようなことが話されるばかりで、これが北川フラムさんの講演なのかと聴く側が心配するほどだった。

しかし、「明治維新の時に美術館、博物館に展示できる『美術』、あるいは教えられる『美術』だけになってしまった。それまでの食事や料理、儀式や音楽や祭りや庭といったものは美術館でやれるわけがないから、生活から離れた『美術』になって、『美術』は嫌なもの、分からないものになっていった」という歴史の説明から、美術本来の「こんなに楽しいものというのを忘れている。それを味わってもらおうとしてやった」と一昨年の「水都大阪」の開催経緯が話されだすと、話は一挙に広がり湧き水のように溢れ出してきた。

「お年寄りの自殺率がトップ5に入っていた(越後妻里周辺)町村で、『効率が悪いから先祖代々やってきたことを捨てろ』という農業政策に対する疑問。そしておじいちゃん、おばあちゃんが元気になることをやろうというのが私たちの出発点」という思いを実現するために、動いた結果が周囲の大反対。しかし、「手を挙げてくれ幾つかの集落」を中心に開催した第1回目が、「やって楽しかった人もいらっしゃって」ということで、50集落、100集落と参加地域が増加。一昨年に開催された第4回では、約200の集落、38万人以上の来場者が訪れる世界最大規模の芸術祭となった。『大地の芸術祭』北川フラムさん

その後話は、北山善夫さんの廃校となった学校を再構成した作品や、イリヤ&エミリヤ・カバコフの『棚田』など約20の作品の解説へと続いていき、それぞれの作品の思い出や、そこにあったエピソードを語る北川フラムさんの姿は、まるでついさっきその作品を観たかように熱のこもったものだった。解説の途中、「空間さえもお金でやり取りされる時代に、時間という記憶だけが人間に残された最後のものではないか」と語ったその姿が、多くの人や作品と出会い、その中で生まれた豊かな記憶をいつまでも大切にしている人なのだと思わせた。

アート作品という媒介物によって、人と人とがつながり、互いの知らなかった一面に出会うこと。自分とは違う他者の存在を知り認め合うこと。そんな幾つもの出会いから生まれた、「アートというのは赤ちゃんと同じではないか」という言葉には、「手間がかかるし、面倒くさいし、役に立たない」アートという存在が、「しかしそこには人を呼ぶ力があって、その時に『持ち主』たちが作品について語り、その土地について語ることで元気になる。場所と人、人と人とをつないでいるのがアートではないか」という思いが込められていた。『希望の美術、共働の夢』北川フラムさん

「アーティストは文明、人間、社会との関係性を考えてきた。だけど今あらゆることが効率的になっていろんなことが捨てられている。全てが平均化して管理しやすいようになっている。便利なことがいいとなっていて、全部貨幣に換算される。そういう時にアートだけが人と違っていいもの。人と違って褒められる唯一のジャンル。世界の全ての人が違っていいというのがあるから、アートが今もほそぼそと生きている理由」。多分、講演の山場であったこの言葉を語り終えた北川フラムさんが一息つくと、そこには確かな熱量と、聴衆一人ひとりがその言葉に圧倒されたような静寂が生まれた。

越後妻有では山や田んぼ、空き家といった効率化から言えば負の側面しかないものを「資産」と呼び、瀬戸内では「捨てられた島」や瀬戸内海こそが「資源」ということで、その場に埋もれた歴史や人々の現実に向き合った。そして、「地域、世代、ジャンルが180度違う人が集まっているのが面白い」と地域の人々から見れば、「都市のアートなるくだらないもの」という存在を「新たな祭り」として融合させることで、現在の閉塞感に覆われた日本社会に新しい可能性を生み出した。『瀬戸内国際芸術祭』

「14万年前、イブの子孫である人類は、好奇心で様々な場所に住みながら頑張ってきた。黒人が2000年間北欧に暮らすと白人になるというように、地域が人間を決めてきたと考えるならば、めちゃめちゃ雨が多くいろんな岩石が溶けて豊かな土壌が作られてきたこの列島には土に対する決定的な親和感がある。水と土の列島で作られてきたものの凄さ。それが我々の美術の根本にあるものであり、同時に世界の人が暮らしている地域にはそれそれの凄さがある」とこの国の土着性に地域という視点で関わりながら、それが世界にもつながる普遍性を語った。

「大きな物語」といわれるイデオロギーや価値観が信じられなくなった時代に、地域アートフェスティバルという中間領域を生み出しながら、自分自身の「小さな物語」を人々と共に作り、その影響を日本や世界というスケールにまで波及させ、変革の波を生み出し続ける北川フラムさん。地域の持つ土着性や歴史に根を下ろし、そこから得られる水や風、光や土の恵みを受けながら生み出される人と人、場所と人との出会いには、ノルウェー語で「前進」を意味するその名のように、この国の未来を切り開く、多くヒントが含まれている。

ウィキペディア 北川フラム
「風と土の交藝」を紹介した結びめのウェブサイト
ウィキペディア 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ
越後妻有大地の芸術祭の里のウェブサイト
ウィキペディア 瀬戸内国際芸術祭
瀬戸内国際芸術祭のウェブサイト
アマゾン 北川フラム著『大地の芸術祭』
アマゾン 北川フラム著『希望の美術・協働の夢 北川フラムの40年 1965-2004』

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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