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戦場の白い旗~森村泰昌 なにものかへのレクイエム自作解説と展示を観て~

 硫黄島の星条旗掲揚をモチーフとした森村泰昌さんの、《海の幸・戦場の頂上の旗》という作品の旗はなぜ白いのか。京都のギャラリーで手にしたちらしを見て何気なく思ったことに、展覧会の核心部分が含まれていた。「戦場の頂上の芸術」というサブタイトルが付けられ、国内4会場を巡回したこの個展は、20世紀から現在までの歴史と、森村泰昌という一人の芸術家の歩みが分かち難く入り混じった、ユニークで優れた展覧会だった。森村泰昌「なにものかへのレクイエム」

ゴッホをはじめとする名画の登場人物や、女優に扮したセルフポートレートで、日本だけでなく、世界的にも活躍する美術家・森村泰昌。そんな森村さんが20世紀を生きた男たちをモチーフにした「なにものかへのレクイエム」シリーズの最終展示となる展覧会が4月10日まで、兵庫県立美術館で開催されている。過去3度、講演やトークイベントを聴き、森村さんならではの視点や考え方に強い興味を抱いていただけに、自作解説が行われる週末に会場を訪れた。

「自作を語る」と題されたイベントの前に一通り作品を観ておこうと、会場を巡って思ったことは、4つの映像作品の上映場所から漏れてくる三島由紀夫や「独裁者」に扮した作者の声が、日頃は静かな美術館にある種のズレを生じさせいたこと。そのくぐもって響く死者に扮した作者の声は、時代をタイムスリップするかのように幾つかの暗闇を抜ける展示形式と相まって、単純に「今」とは言い切れない歪んだ時間感覚を生じさせていたように思う。兵庫県立美術館画像1

特に入場後すぐに観ることになる《烈火の季節/MISHIMA》という作品は、当時19歳の作者が、「芸術に携わる者の覚悟を訴えているように思えた」という割腹自殺を図る直前の三島の演説から、「勝手に受け取った内容を私なり翻訳したもの」であり、「私が初めて歴史に触れた瞬間」という事件を映像化したものだけに、その過去のようで過去でなく、今のようで今でない、不思議な時間軸を鑑賞者に感じさせるものとして機能していた。

そこから続く、政治的なテロを犯した人々や、20世紀の政治や科学分野で「革命」をもたらした人々に扮した作品は、未だ現実に存在する身体が、すでに歴史と化し、固定化してしまった人々の姿に成り代わることで、色褪せた歴史としてではなく、動きや色を感じさせる「血の通った歴史」として訴える力を生み出していた。彼らが信じた思想や行いは、今という時代から見れば、異なる見解を持つものもあるが、そこにあった情熱には、今にも通じるものがあった。なにものかへのレクイエム画像2

展示後半には、作者の初期・代表作「肖像/ゴッホ」にも連なる、20世紀の美術史に名を連ねたピカソやデュシャンやウォーホールといった人物になりきった、ある種の「まねび」の作品。さらに「戦争の世紀」とも言われる20世紀の中で、最も大きな爪跡を残した第2次世界大戦の象徴的シーンを自身の身体を使って再構成した作品など、作家の個人史と、その作者が生まれ育った戦後日本という状況が、分かち難く入り混じっていることが作品を通して伝わってきた。

中でも展示最後の作品《海の幸・戦場の頂上の旗》は、戦争を繰り返してきた20世紀という大きな歴史の中で、小さな個人がいかにして「自分の旗」を掲げるかという人々にとっての共通命題を、作者の無意識を集積したような映像として作品化。小さな緑茶店という家庭を背景としたある日本的な人物が、名も無き一兵卒として他者と出会い、武力ではなく、無力でほとんど役に立たないであろう「美術」によってつながり、「芸術」という名の白い旗を掲げるまでが、個人的かつ普遍的な物語として描かれていた。森村泰昌さん掲載美術手帳

「自分を知るために歴史というパンドラの箱を開けてみなければならないと以前から思っていた」。鑑賞後に行われた自作解説のイベントでそう語った作者は、「本人と思ったぐらい似ている」と言われたアインシュタインや、昭和天皇に扮した体験の中から、「写真はライテング。どんな風に光を当てるか重要」という言葉でその難しさを語った。20世紀という歴史を生きた男たちに光を当て、彼らに扮することで死者たちを鑑賞者の中にも蘇らせたこの展覧会。

そんな彼らを含む無数の人々が、「日々の生活の戦い」によって築き上げた今という時代に、「あなたなら どんな形の どんな色の どんな模様の旗を掲げますか」と問う森村泰昌が掲げた「芸術」の白い旗は、今も「宇宙の風」に吹かれながら、力強くはためいている。

兵庫県立美術館 森村泰昌「なにものかへのレクイエム-戦場の頂上の芸術」のページ
ウィキペディア 森村泰昌
ウィキペディア 三島由紀夫
アマゾン 『美術手帖』 2010年 03月号 [雑誌]

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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