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「『近代』を越えたアートの地平」~メディア芸術ってよくわからないぞオープントーク京都編に参加して~

 村上隆さんとpixiv(ピクシブ)が主催したイベントや木村伊兵衛写真賞関連のリサーチのため3日間滞在した東京から、直接会場入りした第3回メディア芸術オープントーク「メディア芸術」ってよくわからないぞ京都編。会場は京都の中でもサブカルチャー系の情報発信地として大きな役割を担いつつある京都国際マンガミュージアム。「メディア芸術」という不明瞭なジャンルを、その分野に詳しい人々と一緒に話し合ってみようというイベントは、行政が主催するイベントとは思えないほど柔軟で風通しの良いものだった。メディア芸術京都ちらし2

昨年秋、京都で開催された「文化庁メディア芸術祭 京都展」。そのイベントの一つとして行われた養老猛さんとゲームクリエーターの宮本茂さんの講演については創造的な対話がなされていなかったのではと、このブログでも紹介。展示会場となった京都芸術センターの作品群については、技術を主体としたまだヨチヨチ歩きの作品がほとんどで、注目度が高いはずのマンガ、アニメ、ゲーム関連の展示は、作品以外のキュレーションの部分が弱い気がしてこのブログで取り上げることはなかった。

そんな行政色の強いイベントに関連した今回のオープントークは、「芸術」という自分の専門ジャンルのタイトルが付いてなければ、たぶん参加しなかっただろうイベント。話し手の方々にはそれなりに興味はあったが、このような話し合いによくある学術トークに終始して、聴衆を置き去りにする毎度のパターンを想像していた。しかし、実際イベントが始まってみると、ことのほか開けた話し合いがスピーカーの4人だけでなく、聴衆も参加して行われ、有意義な時間を過ごすことができた。メディア芸術京都会場2

3時間という長丁場のイベントであり、活発な意見交換が行われたこともあって、このトークを単純にまとめることは難しいが、それぞれの話し手の特色が出た部分に絞って紹介していくと、東京大学大学院情報学環教授の吉見俊哉さんは、「マンガやアニメの起源を鳥獣戯画まで戻るのはやめましょう」という言葉に象徴されるような、「近代」という現代から手の届く距離に視点を限定することで、より明確にテクノロジーや「近代」が及ぼした影響を「メディア芸術」の中に見ていく立場を提示。

豊富な情報の中から、「大衆的な興行」として生まれた映画産業から紙芝居、貸本漫画、マンガ、アニメ、ゲームと派生していった、「視覚的映像のテクノロジーを前提として出てきたものがメディア芸術ではないか」という視点を提供。アーティストで東京藝術大学大学院映像研究科教授の藤幡正樹さんのプレゼン資料に触発されて、約半日で作ったというパワーポイントにはかなり説得力があった。またこのような「単線的図式や、ハイカルチャーやサブカルチャーといった二元論でメデイアが理解できるのか」という疑問も同時に投げかけた。吉見俊哉さん『メディア文化論』

そこには現在起きている「グローバリゼーションによる国民国家の衰退や、カテゴリーの境界が曖昧になってきている状況。さらにはある種の歴史的必然があるのではないか」と「近代」や「現代」の先に生まれつつある同時並行的で、様々なものが入り混じった状況を示唆。「分からないぞと考えていることで、深いところにいきつくのではないか」と今回のオープントークで「メディア芸術」について話し合うことが、「カテゴリー論争」ではなく、その奥に潜むものに関わるものだと語った。

4人のスピーカーの中で最も活発に意見を述べた藤幡正樹さんは、その奥に潜むものをアーティストとしてより明確な言葉で言及。西洋の近代国家の成り立ちの中で、「国家が国民を文化的主体にする必要があって、そういう文化的教養を身につけなければならないというので、自分で物事を判断できるような能力や、ものを自分で考え主体的になる国家と個人の関係が生まれたが、最近ではそれが崩れてきている。しかし実は、日本にはそのような関係がもともとなかったし、今現在も個人主義や民主主義が社会の中で根付いていないのではないか」と問題提議。『不完全な現実―デジタル・メディアの経験』

そこから「これまで日本では『世間』が個人が考えることの代行をしていた。そしてコメディアンやマンガ家といった『世間』の外に出たもの。『外道』な人たちが『世間』のことを考えずに作ってきたもことが面白いし、そこに『世間』を越えたメッセージがある。メディア芸術が『世間』的に認められ、発展していき、『世間』からはみ出した表現が受け入れられていくことで、誰もが自由に考えることや、民主主義や個人的なものに向き合うきっかけになっていくのではないか」とメディア芸術が含む今後の可能性を語った。

控えめなスタンスに立ちながら、美学者の観点で「メディア芸術」について語った京都大学大学院文学研究科教授の吉岡洋さんは、「新しい表現形式が出てきた時にまず怪しいものとして出てきて、その後、どのように語られ出したか、厳粛(げんしゅく)に語る人が沢山続いてていくことで、厳粛なものとして認められていく流れがある。その意味ではギャグマンガもそうなりえると思う」とこの国に独自に発達している表現を擁護。この分野について様々な名称を考えてきた中で、「メディア芸術はもう、メディア芸術という名称でいいんじゃないか。概念定義は僕の病気みたいなものだけど、その加減が難しい」と概念化でこぼれ落ちるものあるとも語った。『文学・芸術は何のためにあるのか』

進行役として場内を含む様々な意見の引き出し役を務めた京都精華大学芸術学部教授の島本浣さんは、専門のフランス美術史の立場から具体的な事例を挙げて話し合いの間口が狭まらないように腐心。様々な意見が対立せず、建設的な対話が生まれる状況を作り出した。映画と漫画との中間に出現したメディアの一つとして紙芝居の実演も行われ、その土着的なアナロク性や双方向的コミュニケーションが、多くの参加者に真新しく映ったこのイベント。日本という国の持つ独自性と、西洋的価値観が生み出した「近代」。その2つがハイブリッドに交じり合った先にある可能性が、「メディア芸術」という言葉や、そこに含まれる表現に秘められているのだと思った。

メディア芸術オープントークの情報が掲載された公式サイト
昨年行われた文化庁メディア芸術祭京都展のウェブサイト
ウィキペディア 吉見俊哉
ウィキペディア 鳥獣戯画
ウィキペディア 藤幡正樹
吉岡洋さんのウェブサイト
島本浣さん プロフィール - あのひと検索 SPYSEE [スパイシー]
アマゾン 吉見俊哉著『メディア文化論―メディアを学ぶ人のための15話 (有斐閣アルマ)』
アマゾン 藤幡正樹著『不完全な現実―デジタル・メディアの経験』
アマゾン 吉岡洋・岡田暁生共編『文学・芸術は何のためにあるのか? (未来を拓く人文・社会科学)』
アマゾン 島本浣著『美術カタログ論―記録・記憶・言説』

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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