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「訪問!KaiKai KiKi(カイカイキキ)三芳スタジオ」~村上隆さんとpixivが主催したワークショップに参加して~

 昨年末、大阪で行われた『芸術闘争論』出版記念トークイベントで村上隆さん自身の口から発表された「pixkiki バスツアー」。去年このブログで注目してきた、村上さん、0000(オーフォー)、pixiv(ピクシブ)の今が、このイベントに参加するだけで一挙に把握できるということで、その時点で参加を決定。年明け第一弾となったイベントは、埼玉・三芳、東京・中野、元麻布の3箇所を移動して17時間ブッ通しで行われたものだったが、まずはその第一部、pixivユーザーを対象としたKaiKai KiKi三芳スタジオでのワークショップの様子を紹介したい。カイカイキキ三芳スタジオ外観

東京・池袋駅から東武東上線で柳瀬川駅まで行き、そこから幹線道路沿いの小型ショッピングモールの無料バスに乗ってやって来たKaiKai KiKi三芳スタジオは、全長約150メートルの敷地内に箱型の建物が3つ並んだ巨大な空間。以前は大手宅配会社の物流センターだったという建物は、幹線道路向かいにあった家電量販店の建物を3つ並べたような途方もない大きさだった。周辺は日野自動車の整備工場など、輸送や運搬関連の工場や郊外チェーン店が立ち並ぶ、幹線道路周辺によくある風景。そこに佇むスタジオは、規模や周囲の雰囲気から考えると、思い描いていたアーティストのスタジオというイメージからはかけ離れていた。

美術手帳の特集によれば、総勢60人が24時間体制で働くという現場は、スタジオというよりも工場と呼ぶ方が相応しく、カードキーで開閉か行われていたセキュリティーや、象一頭ぐらいは楽に入りそうなエレベーターなどは、この空間が一人のアーティストの制作や企業活動によって運営、維持されているという事実がちょっと信じられないようなものだった。開始40分前に到着した会場では、pixivユーザーでありながら、アメリカの芸術大学に通う日、中、米の血が交じり合ったクオーターの青年と海外のオタク文化の現状について話し合い、気づいた時には約50名の参加者が集まって、開かれたシャッター内へと導かれていくとこだった。カイカイキキ三芳スタジオエレベーター

参加者のほとんどは10代後半から20代中盤ぐらいの若者で、中には「GEISAI♯12」で会田誠賞を受賞した川上秀行さんも参加していた。また村上さん関連の動画や記事で見たことのある人や場所の中に、自分が入り込んでいくリアルとネットの奇妙な融合感を味わうことになった。巨大なエレベーターの扉が開いてまず目に入ったのは、村上さんの『芸術闘争論』実作編で制作工程が写真付で紹介されていた『私は知らない。私は知ってる。』というドクロの作品。高さ3メートル、幅2.3メートルの作品が3つ並んだ空間のさらに奥には大学の体育館のような広々としたスペースが広がっていた。

白を基調としたシンプルな空間のあまりの広さに落ち着きなく佇んでいると、ワークショップの参加者のために作られたであろう作業席のほとんどが、やる気のある参加者ですでに埋められており、遅れて動き出した人々は後方の席に座ることになった。高校の授業以来となる絵筆や水入れの準備をして、目の前に置かれた真っさらなキャンバスと絵の具に不安を感じていると、大阪のトークイベント以来となる村上さんが登場。村上さんは今回のの趣旨を「pixivの中で表現している皆さんにも、キャンバスや紙に書いてみたいという人もいるんじゃないかと思いまして、pixivの片桐さんと相談して開催することになりました。学生時代、お金が無くて3枚買ったキャンバスを何度も塗りなおして完成させていたように、アナログになった瞬間に物が動き始めるので、そんな感覚を味わって欲しい」と説明。カイカイキキワークショップ風景

早速、カイカイキキ三芳スタジオ総監督のシショウさんの進行により、4名の実技指導員がアクリル絵の具の使い方や、制作の進め方を実演。その中には大阪の青井画廊で1月22日まで開催中の「Mr.のChildren大阪やで!」展の出品作家・田尻悠さんや、日本画Ustでアーティスト志望の学生たちの中心的存在となった杉山愉岳さんもいて、彼らの実作現場を見れる貴重な機会となった。20分の実演が終わり、席へ戻ってキャンバスに向かい合うことになったのだが、そこからが何をやって良いのかも分からない、落ちこぼれ生徒の授業時間のような苦しい時間が始まった。周囲の参加者は絵に対する意識の高い人々で、自分なりの描きたいものや方法論を持っている人ばかり。なのに自分は、一応描きたいものを決めてはいたが、それを描けるだけの技術も度胸もない。

「今年の目標」というテーマのために用意した『芸術企業論』の村上さんの写真をキャンバスに写してはみたものの、その鉛筆画がかなり酷いシロモノで、本人を目の前に見せるにはさすがにそれはないだろうという状態だった。またその描いた輪郭線をどのように絵の具で処理してよいのかさえ分からず、鉛筆と消しゴム、絵筆と絵の具とを何度も持ち替える時間が続いた。正直、下手な自分が何かを描いてキャンバスを汚すよりも、白いキャンバスのままの方がシンプルで美しく、最初の一歩がなかなか踏み出せなかった。周囲の進行度合がプレッシャーになって、さすがに真っ白のままではマズイだろうと、とりあえず赤と黄色を混ぜたものを遠慮がちに塗ってみたのがその後の不幸の始まりだった。ワークショップ指導風景

一度塗った絵の具は消しゴムで消す訳にもいかす、ならば赤とのバランスを考えて緑を勢いにまかせて塗ってみたものの、画面は酷くなるばかり。さらに青、それから黄色と、チューブから出したままの色を互いが交じり合わないように置いていくと、一応キャンバスは埋まっていく。色を混ぜれば色彩的広がりができるのは分かるのだが、下手に混ぜ合わせることで色が濁るリスクを避けた方が無難だという心の声に従い、白、紫、茶色を追加した画面は、自分でも一体何がしたかったの分からない域まで達していた。後ろで見守っていた指導員の人々も、そのあまりの訳の分からなさに、誰一人声をかけてくれない状態となった時点で、「これはマズイぞ」という危機感が生まれてきた。

すでに手遅れな状態を何とかしなければという焦りの中で、色ムラの中に見えてきた目や鼻や口。これ以上酷くはならないだろうと、干しブドウのようなボリュームでその色のかたまりに目を入れてみると、ちょっと笑えるモノになった。後ろに来た女性の指導員の方の「それ意外に面白いですよ!」という声を真に受けて、それならもっとやってみようと青や黄色の存在にも目や鼻や口を書き入れたみたところ、その奇妙なキャンバスを見て呆れ顔の村上さんと目が合った。Ustのカメラマンを引き連れて戻って来た村上さんは、自分でも何が描きたかったのか分からない絵について解説を求めたり、その絵に笑いながら感想を加えたりと、約3分間ほどの受け答えが全世界に配信された。『私は知らない。私は知ってる。』

個人的には「黒歴史」として分類されるであろう出来事が、アーカイブとして残らなかったことは良かったが、ある種の日常の中に不意に侵入してくるUstやtwitterといった技術の風通しの良さに、瞬時に対応しなければならなくなる時代はかなり疲れるものだと思った。作品タイトル『赤いヤドカリと仲間たち』を描き終えて、一通り他の参加者の作品を見ていくと、さすがにpixivユーザーであり、今回のイベントに参加しに来た強者たちだけあって自分の中の描きたいものが描かれた作品が多かった。中には2時間足らずで自分独自の世界観を表現したようなものまであったりしたが、実際その分野でプロとなり、人々に求められるレベルにまで達することが、アーティストであれライターであれ、いかに大変なのかということを実感できる機会となった。

そういう意味では、売れる作品やマーケットにこだわり、約15年で巨大なスタジオに象徴されるような独自のシステムを築き上げ、作品や関連商品の売り上げでそれを維持、運営し続けていることはやはり並大抵のことではないように思われた。ワークショップが終わりかけた頃、村上さんが、大量のキャンバスの切れ端を持ってきて、「5年ぐらいためてきたもので、ミシンで縫ったら大きなキャンバスになりますんで、袋に入れて持って帰ってください。Mr.は以前、これを縫ったヤツで大きな作品を作ってました」といって配った参加者へのおみやげ。さらには帰り際に感想を尋ねられ、「自分の中に描きたいものもないのに白いキャンバス向かい合わなければならないキツさがありました」という言葉に、「キャンバスに向かい合うには勇気がいる」と何気ない返答として、そんな言葉が聴けただけでも、今回のワークショップに参加した価値があったように思う。

ウィキペディア 村上隆
0000Gallery(オーフォーギャラリー)のホームページ
ウィキペディア pixiv
すでに終了したpixiv×カイカイキキ バスツアーと新年会開催を発表&参加者募集のページ
ウィキペディア GEISAI
「Mr.のChildren大阪やで!」展の詳細が掲載されたMr.さんのブログ

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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