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「スーパーフラット(super flat)の意味」~では村上隆さんの何が凄いのか2~

 前回書いた「では村上隆さんの何が凄いのか・フィギュア編」が他人ツイートとしてではあるけれど、村上さん本人からリツイートされたこともあって、かなりのアクセスがあった。それに味をしめた訳ではないけれど、95年から99年までの第一次フィギュア・プロジェクトの終盤から始まった「スーパーフラット」関連の動きについて今回は説明してみたい。スーパーフラット画像

正直、その明確な定義はすでに「スーパーフラット展」から10年が過ぎ、その集大成と言える「リトルボーイ(Little Boy)展」から5年が経を経た今でも明らかでないことは、先月放送された斎藤環さんとのニコニコ生放送で「理念そのものは考えてない」といった村上さんの発言にも表れているように思う。実際、「スーパーフラット」に関連した2冊の本(『スーパーフラット』と『リトルボーイ』)にもその明確な理念は書かれてないし、『スーパーフラット』の巻頭文にも、「社会も風俗も芸術も文化も超2次元的」ということが、「コンピュータのデスクトップ上でグラフィックを制作する際の、いくつにも分かれたレイヤーを一つの絵に結合する瞬間」という感覚的な言葉で表現されてはいるが、そこに確固とした定義はない。

今回、関連資料を読み込んだ中で、最も興味深かったのは美術評論家の椹木野衣さんの文章。リトルボーイ展図録(P187からP207)で論じられていた、「ハイ・アートとサブカルチャーが複雑に絡み合い両者の垣根も定かではない」状況がスーパーフラットであるという解説は、同じ文章内の戦後文化におけるサブカルチャーの意味を論じた部分と共に、それなりの説得力があった。しかし、個人的に興味があった、ではなぜその「スーパーフラット」がそれなりの力を持っていわゆる西洋諸国に受け入れられたのかという疑問については、もう一つはっきりした答えが見えてこなかった。フィギュア画像1

それは哲学者で批評家の浅田彰さんが言った「日本の伝統美術の中からとくに平面性を取り出してくるのも、それをアニメの平面性とつなげてみせるのも、世界市場に向けてのマーケティング戦略に過ぎない」という発言も同様で、その「戦略」がこうも鮮やかに力を発揮した理由が何であったかについては関連資料内からは見出せなかった。前回のフィギュア編で紹介した村上さんの代表作の一つ、『My Lonesome Cowboy』が2008年に16億円で落札された理由は、作品のクオリティーや文脈だけでなく、「スーパーフラット」によって日本の最新の文化状況を欧米のアートの世界にプレゼンできたことや、ルイヴィトンとのコラボレーションでの成功が大きな要因だったのだから。

ではなぜ「スーパーフラット」が欧米の美術界にそれなりのインパクトを持って受け入れられたのかといえば、今回も前回同様、時代背景抜きには考えられないと思う。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ。そしてそれが原因として引き起こされたアフガニスタン紛争とイラク戦争。これらは東西冷戦の終結後の多極化の流れを象徴した出来事であり、ワールドトレードセンターというアメリカ資本主義のシンボル的高層ビルが、テロにより「グラウンド・ゼロ」と呼ばれる場所になってしまったこと。さらにはその後のイラク戦争が秩序ではなく、混乱しかもたらさなかったことは、「権威」でさえも引き落とされ、偏在する極の一つとして成立するしかない時代に突入したことを示しているだろう。『リトルボーイ』画像

そんな西洋的価値観の転換期に、一度は戦争で完膚なきまでに叩きのめされ、そこから「西洋式」の社会システムを導入し、その発展の過程の中で育っていった、「西洋」と「東洋」が入り混じったある種の奇形した文化を「世界の未来かもしれない」という形でプレゼンしたことが、「スーパーフラット」が西洋社会で受け入れられた一番の要因だと思う。これまでにない何かを導入することによって、ある種の行き詰まりを打破しようとする試みの表れが、「スーパーフラット」的日本文化の評価につながった理由であり、イラク戦争前後に起きた世界的なキティちゃんブームなどは、「キティ」という西洋名を持ちながら、西洋的「自我」や自己主張もなくイノセント(無垢)に佇む存在を通して、「カワイイ」などに代表される日本文化のエッセンスを取り込もうとしたのではないか。

絵画で言えば、一点透視図法に代表される一神教的、または近代以降はそれに取って代わった科学的論理。西洋美術の発展は、ある種の人間中心主義的なものがもたらす強さと、それゆえの限界のようなものを孕んでいるのではないか。そこに『スーパーフラット』の表紙デザインが象徴する、幾つもの異なる目玉を持ちながら、それでいて中心(明確なコンセプト)は存在せず、全ての作品がある種の非科学性を含んだ作品がヒエラルキーもなく並列に並んでいる。「東京POP」という特集から始まった「スーパーフラット」は、皇居という中心であって中心でない場所を中心としてだだっ広く広がり、「社会も風俗も芸術も文化」も飲み込んだ東京という街の在り様が象徴する戦後日本の姿そのものと言えるだろう。rakucyuurakugaigazou

そこにはアイヌ文化などにも残るアニミズム(ある種の人間中心主義でない多神教性)や、神社などに見られる中空構造、洛中洛外図屏風や信貴山縁起絵巻に描かれた日本美術に脈々と流れる非科学的視点といった「東洋」的伝統と、科学技術や「西洋」の美術技法を取り入れた、ひどく奇妙で統一感のない、ある種のハイブリットな文化の未来が雑然と提示されている。10年前に示された「スーパーフラット」という概念は、そのような「西洋」と「東洋」の文化が多層構造で組み合わされ、それがヒエラルキーもなくフラットに並べられた現代の日本的な状態のことを言うのではないか。

「スーパーフラット」という概念により像を結んだ「未来」は、中心偏在的なインターネットの出現や、アジアやアフリカ、中東や南アメリアにまで広がりつつある新興経済発展諸国の存在を無視できなくなった多極的世界を、日本という「東洋」と「西洋」が混在化した文化的実例を示すことで、たとえ西洋の科学技術が生み出した「リトルボーイ」という原子爆弾により、一度は草も生えない焼け野原となったとしても、そこから異なる文化を融合させ、新たな土着文化を作り出していくという今後の世界の可能性を提示しているのではないか。それぞれの国がそれぞれの文化状況と「西洋」化を背景とした、「社会も風俗も芸術も文化も超2次元的」に溢れかえったカオス的な世界。そんなカオス的「未来」を言語化した概念が「スーパーフラット」の意味だと思う。
では村上隆さんの何が凄いのか1に戻る

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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