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「実は、民主主義の根幹」~東京都青少年健全育成条例改正案可決が突きつけるもの~

 今年はアートだけでなく、コミケ(コミックマーケット)やワンダーフェスティバルといった、いわゆる「オタク」と言われる人々の現状をリサーチしたりと、サブカルチャーの分野に関わることが多かった。ある程度ゲームやマンガ、アニメといったものに接してきた世代にとって、その近いようで遠い世界に初めて触れ、近づけば近づくほど、自分の欲求とは異なる「欲望」の障壁があり、そこから先には一歩も進めないことを実感することになった。簡単に言えば自分の中にはあれほどの熱意を持って美少女フィギュアや18禁の同人誌を所有したいという欲望はなかったということだ。そんな中で2010年12月15日、東京都青少年健全育成条例改正案が可決された。一見すれば東京やサブカルチャーに関わる人々以外は関係ないように見えるこの問題が、いかに民主主義の根幹に関わるものなのかを説明してみたい。東京都庁画像1

今年9月、京都国際マンガミュージアムで開催された「マンガ表現規制問題の根源と問う」というシンポジウムに参加するまでは、この問題はいわゆる「エロ」とか「ロリ」とかいった分野に関わる人以外、関係無いものだと思っていた。しかしパネリストの呉智英さん(評論家)や、山口貴士さん(弁護士)の話を聴けば聴くほど、この問題が単なる趣味や性的嗜好の問題ではなく、民主主義の根幹に関わる問題だということが見えてきた。

条例を簡単に説明すると、東京都が条例内に定めた性的描写のあるマンガ、アニメ、ゲームを青少年(18歳以下)に売ったり、貸したり見せたりしないように出版社や制作会社、販売者は勤めなければならないというもの。定めた性的描写については、法律に触れる性行為やそれに近い行為、また近親相姦やそれに類した行為が対象となる。これらは「努力目標」であって、具体的な罰則はないけれど、現在、出版分野で行われている「東京都の不健定図書(有害図書)」の指定を受けた場合、業界の自主規制ルール(連続3回、もしくは1年に5回以上指定を受ける)により、それらの出版物は、通常経路での販売が不可能となる。新横浜ありな

この条例の狙いは「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案質問回答集」というネット上でも見れる都が提示した長いQ&Aで再三書かれているように、「青少年が性的対象として描写された悪質な漫画などを青少年の目に触れさせないこと」というものであり、その趣旨自体に反対する人は少ないと思う。(今年4月版で今回の可決版とは異なる部分もある)しかしだからといって、出版社や制作会社のほとんどが東京に集中している状況で、それらの企業やマンガ家をはじめとした創作に関わる人々が強く反発している条例を、たった3週間で再提出して通過させるようなやり方が果たして正しいのだろうか。

一連の石原都知事の発言のように、自己の「健全さ」を信じて疑わない人々が一方的に条例を推進し、それを制度として多くの人に押し付ける。確かに過激な性表現を含むマンガやアニメ、ゲームなどが氾濫した現状に問題がないとは言えないが、それがあたかも青少年の「不健全さ」を助長した戦犯のように扱われ、短絡的に制度化されてしまうこと。複雑な背景があるにもかかわらず、問題を単純化して解決しようとする人々が、そこから零れ落ちるものの存在を見つめることなく、切り捨て多数決で押し切ることに強い違和感を感じる。石原慎太郎画像1

これまで便宜上優れた制度として採用されてきた民主主義という手法は、確かに多くの人々が共存していかなければならない社会を運営していくためには大きな力を発揮してきた。しかし、人々の多様な内面に関わる極めてデリケートな問題に対して、積極的に介入し、それを制度化するような場合には、あまりにも柔軟性を欠くのではないだろうか。東京都は過去にも、君が代不起立問題などで教師らを戒告、減給処分にしたりと、公権力という強者の力によって個人の行動を制限する動きを見せてきた。今回は制作や創作に関わるより多面的な文化の問題に規制の網を張るのだから、上から視点で物事を一方的に押し付けるのではなく、互いの妥協点を見出すような建設的な対話が必要ではなかったのか。

最近よく行く講演会やシンポジウムで、一般的に行政と言われる側に立つ人々の、あまりにも社会や文化を作り出す個という視点を欠いた発想や、個から生まれる熱量や思いの欠けらもない発言を聴いていると、戦後日本の復興にはこういうシステムが極めて有効だったのかもしれないが、未だにそのような価値観や発想が蔓延した状態ではこの国の未来は本当に危ういのではないかと思う。個人的に問題が起きることは、その問題に向き合い解決していくための絶好の機会と考えている人間にとっては、今回の改正案可決によってあぶり出された問題に向き合いながら、より多様な価値観を受け入れる社会のあり方を模索していきたいと思う。

ウィキペディア 東京都青少年の健全な育成に関する条例
東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案質問回答集のサイト
ウィキペディア 呉智英
ウィキペディア 山口貴士
ウィキペディア 石原慎太郎
9月20日に京都国際マンガミュージアムで行われたシンポジウム「マンガ表現規制問題の根源を問う」の書き起こしが掲載されたサイトのページ

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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