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「では村上隆さんの何が凄いのか・フィギュア編」~『芸術闘争論』トークショー@大阪を聴いて~

 前回は対論者の森川嘉一郎さんが日本の美術教育の問題点をズバッと切り裂くプレゼンを行った『芸術闘争論』トークショー。3回目となる今回は大阪に会場を移し、村上さんの「芸術方法論」的な話が2時間半、みっちりと詰め込まれた内容だった。しかし世界のアートのシーンの状況をほとんど知らない聴衆にとっては、本の内容につながる自作の解説はまだしも、村上さんが「僕の作品はミニマリズムの人々がやってきた手法に依存している」と例に挙げた作家たちの話は、「日本ではほとんど観る機会のない作品」ということもあって、多くの聴衆が十分咀嚼できないかなり高度なものだった。芸術闘争論画像1

ニコニコ生放送もなかった今回のトークは、場所が関西ということでぜひ参加しようと当日までに『芸術闘争論』を読み込んで会場入り。立ち見も含め、150名ほどの聴衆が集った会場は、主に20代のおしゃれ系の本屋で買い物をするような若者を中心に、中には70代のロマンスグレー系の方もいたりと、簡単にひとくくりにはできない多様な人々で溢れていた。ウクライナのキエフから帰国したばかりという村上さんは、旅の疲れも見せない相変わらずのバイタリティーでトークを開始。前半は「文化表層的でない村上作品の見方」を自作のスライドを映しながら解説。

これらは、基本的には『芸術闘争論』で解説された「お花畑」、「ドクロ」、さらには村上さんの代表作の一つと言われる「727」の話だったのだけれど、「作品の意味をタイトルで鑑賞者に伝えなければならない」とか、「ウォーホールのマリリンのように反復することによって少しづつ作品を詰めていく」など制作側の人間への具体的なアドバイスが幾つも含まれていた。また「絵を描く人がよく自殺するもの、実はゼロからものを創る精神的なストレスは相当なもの」。「作家はやることがなくなったらつまらなくなって鬱病になって死ぬ。僕もやることがなくなったら死ぬと思う」と聴く側をドキリとさせる話もあった。murakami画像1

後半、村上さんが「プロセスが少ないほど強いプレーヤー」とチェスに喩えながら解説したミニマリズムの作家たちは、全て現在の海外アートシーンで高く評価された作家たち。その凄さはスライドに映された作品の画面構成や、解説された「狙い」によって理解できるのだが、村上さんには自明の事でも90年代後半から2010年までの世界のアートシーンについてほぼ知識のない聴衆にとってはズンズン進んでいく解説を頭に入れることで精一杯だったように思う。そのことは最後に行われた質疑応答で、8人の質問者の誰一人、まともな質問の域に達していなかったことにも表れていたと思う。

2時間半にわたるトークショーを終え、クリスマス用にライトアップされた御堂筋を歩きながら考えたことは、美術手帳の村上隆特集の時、一度は書きながら、最後まで書き終えることができなかった「では村上隆さんの何が凄いのか」という文章をもう一度書いてみようということだった。今回のトークショーも含め、作家の側から発信される情報を蓄積することも大事だが、その先にある「村上隆さんの凄さ」や「世界のアートシーンの流れ」というものを理解していかなければ、次の動きを見せ始めている芸術や社会の動向を、ある的確さをもって見極めていくことは難しいのだと思った。美術手帳2010年11月号画像1

今回のトークショーと、それのために読み込んだ『芸術闘争論』をはじめとする村上さん関連の資料を読んで再認識したことは、アーティストとして多様な活動を続ける村上隆さんという作家を掘り下げていくには、全体としての村上隆像を見ていくよりも、幾つかのパーツに分けてその姿を理解したほうが色々なことが明確になるということだった。そしてもう一つ、決して忘れてはいけないことは、村上隆という作家の最終到達点は「美術の歴史に名を残す」というものであり、その一点を見失ってしまうと、色々なことが不明瞭になってしまうので、それだけはいつも頭の片隅に叩き込んでおかなければならないということだった。

一体いつ、村上さんが自身の目標を「美術の歴史」に定めたのかは、読み込んだ資料の中には見出せなかった。しかし94年から95年にかけてのニューヨーク留学中、「ニューヨークにおけるアートのルールを理解しないままでは、ぼくは、美術の本場の世界で生きていられないということが、身にしみてよく分かりました」という体験を経たことが、その後の活動に大きな影響を与えているのは確かだと思う。さらに「アーティストにとっての天国でなければならない場所」で制作する気にもなれず、日本の漫画やアニメ見たり、読んだりした中から見つけた「日本人が本質的に抱え込む何か」を含んだオタクという存在を自分の中に見出したこともその後の活動の大きな契機となっただろう。hiropon画像2

海外のアートシーンで最初に評価された村上作品が今回テーマにしたフィギュアだったことは、意外に知られてないかもしれない。2作目の等身大フィギュアとなる「Hiropon」は特大の巨乳から溢れ出す母乳で縄跳びをする美少女フィギュアという奇抜な作品ということもあって高く評価された。これに続き、今や村上作品の代表作とも言える『My Lonesome Cowboy』は08年にニューヨークのオークションで16億円の落札価格をつけるなど、アートに興味の無い人々にまでそのニュースを伝えた。ある意味「狂気」とも言えるポーズやセクシャリティー(造形としても凄いらしいが実物未見なので保留)が評価されたという事はもちろんだが、それだけでなく、ここにも村上さんが言う「西洋美術史の文脈」が読み取れる。

ルネッサンス以降の美術史において、歴史に名を残してきた作家たちの作品を見ていくと、作品のクオリティーはもちろんだが、いかに時代とリンクした表現や題材、手法を用いてきたかが大きな意味をなしている。印象派のモネ、ロマン主義のドラクロワ、バロックのルーベンスなどそれぞれの時代に名を残した作家たちは、それぞれの時代の息吹を新たな形で提示した作品を生み出している。そのことはデュシャン以降の現代アートの世界ではより顕著になっており、ポップアートのウォーホールやリキテンスタイン、ストリートアートのキース・ヘリング、バスキア、さらにはジェフ・クーンズまで、モチーフやアートの方向性で言えばよりヒエラルキーの低い方へ(大衆化)、素材や色彩で言えばよりライト(軽さ、光の量)な方向へとアートは拡散していっている。My Lonesom Cowboy画像1

96年に始まった村上さんの等身フィギュアのプロジェクトは、時代的に言えばドラゴンボールやセーラームーンといったマンガ、アニメ、スーパーマリオをはじめとする日本のテレビゲームが爆発的に世界波及していく時代背景の中で、西洋美術の文脈にジャポニズム以外出てきたことのなかった日本という国の、大衆というヒエラルキーより下層に位置するオタクという人々の文化を、西洋美術史というゲームの新たな一手として導入したものと捉えれば、そのモチーフや素材、色彩のライトさも含め、いかに奇抜な一手であったかは、すでに作品としての市場評価を受けている今なら、ある程度理解できると思う。

絵画のモチーフとして用いられている「DOB君」や「カイカイ&キキ」、「お花」や「ドクロ」といった要素も、フィギュアと同じ構造を提示したものと理解すれば、鑑賞者の好き嫌いという評価軸とは別の所で、作品の意味や作家としての村上さんが評価されていることも分かってくるだろう。デュシャン以降、作品のコンセプチュアル化が進んでいる現代アートの見方は、たとえ作品を実際に観ることはできなくても、そこに込められた意味や時代背景、文脈、コンセプトを読み解いていけば、作品や作者の持つ意味や位置づけを、西洋美術史の中で理解していくことも、決して不可能ではないと思う。
では村上隆さんの何が凄いのか2へ進む

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ウィキペディア ミニマル・アート
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ウィキペデイア キース・ヘリング
ウィキペディア ジャン=ミシェル・バスキア
ウィキペディア ジェフ・クーンズ
ウィキペディア ジャポニズム
アマゾン 村上隆著『芸術闘争論』
アマゾン 『Murakami』
アマゾン 『美術手帖2010年11月号総力特集村上隆』
アマゾン 『Crucible Bodies: Postwar Japanese Performance from Brecht to the New Millennium (Enactments)』

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No title

村上隆の すごいところは

自分で 造形 してない 絵だけ かいたものを 

展示しているところ

あと コミニケーション力 か  芸術とゆう 分野に長くいて

個展をひらく ことが 普通にしてるが この 個展をひらいた

アメリカで 海洋堂 と コンタクトとれた 美術屋が等身つくってくれた 

作ったのは 美術屋
個展の開いたのは 村上隆
イメージの基礎を築いたのは オタク 海洋堂

一人でやると なかなか 創作で エネルギー使って
海外で個展とかできないが この人は一人で造形してないから
そうゆう のに 時間がつかえた

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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