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ニコニコ生放送「村上隆の芸術闘争論2」における森川嘉一郎さんの実力

 ベルサイユ展以降、美術手帳特集、GEISAI台湾、『芸術闘争論』と立て続けに話題を振り撒く村上隆さんの『芸術闘争論』出版を記念して行われているニコニコ生放送。その第2回目となる「芸術闘争論2 日本の美術教育を斬る!」が12月2日、対論者として2004年のヴェネツィアビエンナーレ日本館で「OTAKU」展を企画した森川嘉一郎さんを招いて開催された。正直、放送が始まるまでは、なぜ「日本の美術教育全否定」というサブタイトルのついたイベントに、おたく関係の専門家である森川さんが招かれるのか理解できなかった。しかし一たび森川さんの話が始まると、そこに積み上げられた学術知識に基づいた論理展開は、日本の美術教育を丸裸にしていくほどに凄かった。芸術闘争論2画像

「『芸術闘争論』の感想を」という形で話を振られた森川さんは、「このような本を村上さんが書かざるおえなかったことが日本の美術状況を物語っているのではないかと思う」と準備してきたスライドを見せながら説明を開始。日本の美術教育の問題点を、「外国の中学、高校で教えられている分厚い美術教科書では美術史の状況と自分で描くこと、模写することを両輪にして美術を学んでいるのに、薄い教科書の日本では、美術を手段にした教育が行われており、主要5科目ではない美術の位置づけの中で、詰め込み教育で荒んだ心を癒すためや、心を豊かにするために美術が使われたり、教えたりされている」とその違い指摘。

中学、高校時代の個人的経験を思い返しても、なるほどと思いたくなるような明快な説明にメモをする手を躍らせていると、そこから「大学教育に関わる者として言っちゃいけないんじゃないかと思うが」と前置きして、「大学に入れば半分は学生の自己責任。師事する教員も選べるし、問題があり、疑うのならば、日本の大学を捨て去って外国に行く自由を持っているべきだと思う。疑うことは学生の特権なのだから」と一見優しく見える外見や語り口調からは予想できない厳しい意見で場を引き締めた。さらにそこから自身が過去学んでいた日本の建築界で起きたあるスキャンダルに話を展開。趣都の誕生画像1

現在、日本の建築界が世界水準にあるのは、35年前、「新建築」という雑誌が企画した学生コンペで、その時の選考委員であった建築家の磯崎新さんが、「日本建築教育の惨状を想う」という選評を掲載したことがあったからと解説。それによって生まれた緊張関係が続いたことで、「パースを描いたり模型を作ったりできるという不純な動機で建築学科に入った」という森川さんでさえも、「流行の取り入れ方も分かってきて、流行の先を読んで作れるようにもなった。関心や才能の無い人間でも教育でできるようになる」と自身の建築作品をスライドで示しながら説明。

磯崎新さんの当時の活動を、「作家やアーティストが自分の作品を語ることを潔しとしない傾向を打ち破り、そういうことをして教育していくことが大事なのではないか」と今回の『芸術闘争論』での村上さんの活動との共通点を指摘する感想を述べた。そのある種のプレゼンは、「森川さんのスライドは面白いよ」と事前に凄さを予想していたであろう村上さんをも戸惑わせるほど圧倒的なもので、その密度と圧力には、数多くの視聴者から賞賛のコメントが寄せられた。建築界で「教育」が可能だった理由についても、「美術よりもマイナージャンルであったから。『OTAKU』展ができたのも建築展だったからできたとよく言われた」と語った。美術手帳2010年11月号画像1

いつもは場を仕切っていく村上さんが、森川さんの発言を消化しながら、「アートのルールを変えること」について話を始めると、森川さんは待ち構えていたかのように、「どのようにルールを変えたいとお考えですか」と質問。村上さんはそれに対し、「たとえばアジアのコレクターが欲している作品は、西洋の文脈を踏まえずここ2、30年の社会の世相を反映したものが多い。日本ならばアジアにも受け入れられ、西洋の文脈も踏まえたハイブリッドな、どちらのマーケットにも適合できるものが可能ではないか」と回答。さらに「西洋史を踏まえてないアートまでもっていくことで、コンプレックスを払拭するとこまでいきたい」とも述べた。

そこからさらに森川さんは、「ルールが与えられればそれを教育された結果としてこなすことで、5、6人は世界プレーヤーとして戦える。しかしその後、ルールを書き換えられた時に、ルールの原理、プリンシプル(根本)を司れるか。ルールを絶対化するのではなく、相対化していけるかが問題」とこれからの日本の美術教育が向かうべき方向と課題を示した。村上さんは現状の美術大学について、「学校の構造は上の方に向いたヒエラルキーを崩せないというのがあって、才能がある程度ある学生でも教師たちの怠慢、欺瞞が続くのがもったいないなと思うことがあってこういうことをやっている」とトークショーやtwitterで発言する理由を語った。芸術闘争論画像1

最後に設けられた質問の時間には、日本の美術教育の自分を発散させたり、表現できる機能を肯定的に捉えても良いのではないかという質問がなされたが、それに対し森川さんは、「小学校はそれでいい。『美術教育』が阻害されるかもしれなくても、情操が可能かもしれないから。しかしそれが美術の機能であり、それしか美術の機能がないというのが蔓延しているのが問題であり、古い言い方で言えば教養が重要じゃないかと思う。そしてそれは一般の人にこそ必要なものではないかと思う」と反論し約2時間に渡るイベントを締め括った。

今回、森川さんがこのイベントで指摘したことを簡単にまとめると、美術教育内での歴史的視座を獲得することで、現状を認識し、そこから先の未来を予見する力を得ることが可能ではないかという事だったのだと思う。最後に教養の重要性を語った森川さんの真意は、美術教育だけに留まらず、一般の人々までもが美術や歴史の教養を積み重ねていくことで人間の本質を見極める力を養い、自分の頭で物事を判断し未来を切り開いていくような人々が育っていって欲しいという願いだったのだと思う。美術やアート表現が持つ、内的衝動と外的要因の二つをハイブリッドに生かしていく「闘争」できるアーティストが生まれていけば、この国から新たなアートのルールを生み出していくことも可能ではないかと思う。

ニコニコ動画にアーカイブ化された村上隆の芸術闘争論#2「日本の美術教育はどう特殊なのか(vs森川嘉一郎)」の動画
ウィキペディア 村上隆
ウィキペディア 森川嘉一郎
森川嘉一郎さんのウェブサイト
森川嘉一郎さんのtwitter
ウィキペディア 磯崎新
アマゾン 村上隆著『芸術闘争論』
アマゾン 森川嘉一郎著『趣都の誕生―萌える都市アキハバラ 』(幻冬舎文庫)
アマゾン 『美術手帖2010年11月号』

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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