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「悲劇が残していったもの」~「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」ジョナサン・トーゴヴニク写真展を観て~

 94年、アフリカの小国、ルワンダでジェノサイドと言われる大虐殺が行われ、100日間で少なくとも80万人の人々が殺害された。元は区別などなかった2つの「民族」の一方が、幾つもの要因により憎しみをつのらせ、同じ地域で暮らしていたもう一方の「民族」に対し銃や棍棒で襲い掛かり、国民の10%から20%の人々の命を奪った。無法地帯となった国内では、もう一方の「民族」の女性たちが、一方の「民族」の男性たちによって性的暴行を受け、ある証言によれば「私たちは人間としてではなく、動物のように扱われた」というほど陵辱された。それから16年、その時に望まない妊娠をしてしまった女性たちの子供、約2万人がいることを伝え、そんな悲劇に見舞われた「母子」の姿に向き合った写真展が京都造形芸術大学ギャルリ・オーブで開催されている。ルワンダ ジェノサイドから生まれて画像2

ルワンダで虐殺が行われていたことは知っていたが、それがどんなに凄惨な出来事であったか。またその出来事が残していったものが、人々の営みに消し去り難く存在していることをこの写真展を見たことで初めて理解することができた。2007年、エイズの取材でルワンダを訪れたジョナサン・トーゴヴニクは、そこで虐殺を生き延びた女性に出会い、16年前何が起こったのか、そして彼女たちが今、どのような状況に置かれているのかを知った。目の前で家族全員が惨殺され、何ヶ月に渡って性的暴行を受け続けた彼女たち。そしてその結果、生まれることになった子供たちと感染したエイズ。ルワンダにはそのような女性から生まれた子供たちがおよそ2万人いるという事実を知ったジョナサンは、取材を終えニューヨークに帰った後も、その話が頭から離れなかった。

現地で活動するNGOの協力を受け、再びルワンダ入りしたジョナサンは、入念な下準備を整えて、そんな彼らの姿を撮影し、この事実を多くの人に伝えていくことを決意する。そして「一枚の写真をそこで起きた出来事が伝わるものにするために」、撮影前に「母親」となった女性たちにジェノサイドや子供たちについての話を聴き、その後、「親子」のポートレートを撮影するという手法を選択。約3年をかけて撮られた30点の展示作品には、女性たちの今も苦難を抱え続ける硬く強張った表情と、自分の家族や親戚を虐殺した男たちによって生を受けた子供たちとのそれぞれの「母子」なりの距離感が鮮やかに切り取られている。ある女性にとっては唯一の肉親であり、自身のエイズ介護の担い手として、またある女性にとっては過去の記憶を呼び覚ますどうしても愛せない存在として、子供たちはあるのだった。ルワンダ虐殺3

そんな「母子」のポートレートの横には、撮影前に行われた女性たちのインタビューが添えられている。写真に写された全ての「母親」たちは、虐殺が起き、逃げ惑う中で獲物のように捕らえられ、男たちに連日暴行を受け続けた体験を、ある女性は抉り出すように、またある女性は全てを諦めてしまったかのようにして語っている。そして100日間というジェノサイドが終わった後も、彼女たちにとっては生まれて来た子供の問題、感染したエイズ、自身の中に深く刻まれたトラウマ、周囲から受ける差別や偏見、さらには貧困の問題と今も虐殺によって起こり続けている幾つもの問題について語っている。

すでに16年が経過し、多くの人にとっては過去の出来事となってしまってたこのジェノサイドも、実は当事者にとっては、何ら終わりの無い、今だに向かい合わなければならない現在進行形の出来事だったのだ。この写真展の優れたところは、そんな当り前の事をただそこにある事実として提示し、30組の「母子」がジェノサイド以後のの歳月を、それぞれの苦悩や哀しみを抱えながら生きたきたことを、ある一瞬を撮影することで人々に伝えていることだろう。決して感傷的にならず、硬質でシャープな質感を持った視点は、まるで清潔な医療器具でも撮影するかのように、ただそこにある「母子」の姿を曇りなく写し取っている。そこにはあまりにも過酷な体験を潜り抜けてきた人々に対しての「断絶」から生まれたであろう「静けさの決意」のようなものが見受けられる。ルワンダ虐殺2

30点の作品の前に立たされた私たちは、「母子」の姿とそれに添えられたインタビューを通して、今なおルワンダで続いているであろう彼らの人生に思いを馳せることができる。すでにある女性はエイズにより命を失っていたとしても、ジェノサイドから生まれた彼女の子供が、そこにある現実を引き受けてルワンダで生き続けている。今、私たちと同じ一瞬を生きながら、ジェノサイドという特殊な状況を生き延びたことで、その人生を大きく歪められ、あるいは打ち砕かれてしまった人たちがいる。そしてそんな彼女らが、できれば消し去ってしまいたいであろうジェノサイドの記憶に、子供という存在を通して今も揺さ振られ続けている。過酷な現実を生きる「他者」と出会い、そのことで生きること意味や世界の広さに思い至る。そんな答えの出ない問いに向き合える凄さがこの写真展にはあるのだと思う。

■「時代の精神展」第一回
ジョナサン・トーゴヴニク写真展「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」
会期:2010年11月20日(土)~12月19日(日)
会場:Galerie Aube ギャルリ・オーブ(京都造形芸術大学 人間館1階)
10:30~18:30 会期中無休(12月14日・15日をのぞく)入場無料

京都展以降、東京、大阪でも開催されます。
■ニコンサロン企画展
ジョナサン・トーゴヴニク写真展「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」
会期 2011年1月19日(水)~2月1日(火)
会場 銀座ニコンサロン

会期 2011年3月24日(木)~4月6日(水)
会場 大阪ニコンサロン

会期中無休 入場無料
※会場の都合により、京都展よりも規模を縮小した展示となります。

京都造形芸術大学 芸術学部 美術工芸学科 「ルワンダジェノサイドから生まれて」展覧会オープニング案内のページ
京都造形芸術大学ブログ 展覧会「ルワンダジェノサイドから生まれて」のページ
ウィキペディア ルワンダ
ウィキペディア ジェノサイド
ウィキペディア ルワンダ虐殺
アマゾン ジョナサン・トーゴヴニクル『ワンダ ジェノサイドから生まれて』


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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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