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「自分にとっての物語」~福嶋亮大さんが参加した「ネット社会の物語と『観客』」というトークを聴いて~

 京都では昨日までKYOTO EXPERIMENT(京都エクスペリメント)という国際舞台芸術祭が開催されており、その一環として行われた文芸評論家の福嶋亮大さんの「ネット社会の物語と『観客』」というトーク。森山直人さんという演劇批評家の方をホストとして行われたこのイベント自体は、なかなか論議が深まらず、福嶋さんの最新の考えが聴きたいと参加した人間にとってはもうひとつだったのだけれど、そこで聴いた話に触発され、過去の講演のメモなどを読み返して考えたことについて書いてみたい。KYOTO EXPERIMENT画像1

ノートを取る手が追いつかないほどの濃密な福嶋さんの話から始ったトークだが、ホストとの立ち居地の違いによって次第に話しが拡散し、終盤は焦点のぼやけた話し合いになってしまったこのイベント。「もはやオーソドックスな歴史には誰も反応してくれない」という立場を取る福嶋さんと、過去の事例を提示しながら「知的」に論議を組み立てていこうとする森山さんとでは、世代も違うし、「未来」に対する向き合い方も違い、より積極的にこれからのことを考えていこうという姿勢を持つ福嶋さんに賛同する人間としては、演劇について、「死ぬときは死ねばいい」というシニカルな発言もあった森山さんには、あまり好感を持てなかった。

またアート関係の作品に限らず歴史的(物語的)な読み解き方が好きな人間であっても、95年(戦後50年の節目の年、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件、Windows95の発売などがあった)以前と以降のこの国の歴史や文化に大きな「断層」があると感じている者にとっては、それ以前の歴史を引用して現在を語り、他者を説得する難しさについては何となく理解しているだけに、森山さんの「古い」歴史をためらい無く持ち出してきて今を語ろうとする姿勢には違和感があった。阪神淡路大震災画像2

まあそんな意見はさておき、終盤は拡散したトークだが、序盤の福嶋さんの発言にはかなり刺激的なものが含まれていた。自分とは違う視点からの意見には、では自分はどう考えるのかと思わせるものが多かった。福嶋さんの発言を極端にまとめるならば、「これまでの文化を支えてきたミドルクラスが崩壊し、ある文化が良いということも根本的に信じられなくなった今、自分を正当化してくれるような歴史を作っていかないとやりにくい。それは国家レベルとかいった一体感を提供してくれる大きな歴史ではなく、今ある与えられたもので自分を支え、お互いにつながるためのある種の偽史(フェイクヒストリー)的なものだとしても文化や演劇には必要でないのか」という意見だった。

この辺は以前紹介した浅田彰さんとの講演で話された「大きな物語」の終焉後、いかに「小さな物語」を立ち上げて「耐久性のある向こう側」に到達するかといった問題との共通点。つまりベルリンの壁崩壊以後の多極化や、資本主義社会内での右肩上がりの経済成長といったイデオロギー(観念)的、国家的、企業的な「神話」または「価値観」が崩壊した後の世界で、何を頼りにしていけばいいのかといった問題にも共通するものだった。今回は前回話された「向こう側」へ到達するための方法論は話されなかったが、最近多くのアーティストの講演を「ある種の個人史」として紹介している者にとっては、「自分を支えるための『偽史』」という意見はとても興味深かった。神話が考える画像2

前回や今回の講演で話された文学や演劇における「偽史」の必要性といった問題以上に、混迷した時代を生き抜くためには個人にも「何らかの歴史」が必要ではないかと考える人間にとって、偽史やフェイクヒストリーといった身も蓋もない言い方に抵抗はあるが、「自分にとっての物語」を持つことの必要性には強く同意できるように思う。もっと簡単に言えば、人生の意味を見出し難くなった時代に、それでも何らかの意味を自分の人生に見出していかなければ、かなりきついのではないかということになると思う。

そういう意味ではこのトーク後に始った『個室都市 京都』という京都駅の空きスペースに「個室ビデオ店」を設置するインスタレーションを行った高山明さんという方の作品解説で語られた「今の現実問題として、強い自我で生き延びようというのはありえなくて、弱い自我でも崩れながら落ちていく中で、そこをくぐり抜けていった方がアクチュアルじゃないかと思う」という意見や、招待された外国人演出家の方が「その方向性はこの10年ヨーロッパでも試みて来られたもので、アート(演劇を含む)はまだ見つけられて無いその答えにアイデアを与えてくれる唯一手段だと思う」という考えにはジャンルは違えどアートに何かしらの可能性を感じているものにとっては心強い言葉だった。個室都市京都画像

これまでの価値観が力を持たなくなった時代に観る、優れたアーティストの作品には、時としてこれからの時代を生き抜くための何らかのヒントのが隠されているように感じることがある。またそんな作品を創るアーティストの講演やトークを聴いていると、これまでとは違った価値観を模索しながら、ある種の強度や説得力を持った「自分にとっての物語」がその作家の歩みを通して語られていると思えることもある。「大きな『物語』の終焉」という困難な時代に現代アートを観ることは、そんなヒントや「物語」の中にある新たな価値観を吸収し、「自分のとっての物語」をつむいでいくための積極的な一歩になりえるのかもしれない。

USTREAMでアーカイブ化された今回のトークへのリンク
福嶋亮大さんのtwitter
森山直人さんのtwitter
京都国際舞台芸術祭2010のサイト
京都国際舞台芸術祭2010KYOTO EXPERIMENTのtwitter
今回のトークイベントのを立ち上げたフェスティバル・フォーラムのサイト
ウィキペディア 1995年
ウィキペディア イデオロギー


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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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