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「ヤセ犬の気概」~アーティスト藤浩志さんの根幹~

 一昨日に書いた森村泰昌さんの講演に続き、最終日となった京都市立芸術大学芸大祭では、今最も注目している作家の一人、藤浩志さんの講演会が行われた。先日訪れた「見っけ!このはな」というアートイベントや、子供のおもちゃを交換するシステムを使い、町や人との関係づくりをしていこうという活動は、個人の作品制作といった枠では捉えきれない創造的な「枠組み」づくりの先例として新たな芸術のあり方を提示してくれている。そんな独創的な活動をする藤浩志さんのアーティストとしての転機となった瞬間について紹介してみたい。藤浩志さん画像1

食堂を会場とした森村さんの講演と違い、体育館での開催となった藤浩志さんの講演。どれだけ人が来てるだろうという予想に反し、体育館の片隅でこじんまりと行われた地域住民説明会のようなイベントだった。しかしそのテーマ設定さえもされてない、行き当たりばったりの講演は、藤さんの作家としての活動履歴を大まかに網羅した極めて興味深い内容で、これほど充実した講演になぜ芸大生たちが押し寄せて来ないのかと首をかしげるほどのものだった。

「京芸生」に現在も語り継がれている「池のはにわ」や、当時学長だった梅原猛さんや京都府をも巻き込んだ三条鴨川を12時間限定で泳いだ鯉のぼりなど、学生時代の藤浩志さんの活動はどこかユーモラスでありながら、周囲を巻き込む不思議な力を持っていた。そんな藤さんのゴジラの着ぐるみを着て街に出て行った活動の話から始った講演では、当時の活動を「エネルギーがあって何かしたい。でも何をやっていいかわからない」という持て余した状態を解消するための手段だったと解説。藤さん講演画像2

「芝居にバンドに放送局にバレー部があって、芸祭の時は河原町を仮装行列して3日間徹夜して」というような学生生活の中で制作を行い、その作品が美術手帳で紹介され、様々な展覧会に誘われるようになっていった。作家としての活動の場を広げ、同世代の芸大生が羨むような状況に置かれながらも、当時は「逃げれば逃げるほど展覧会が追っかけてくる」という思いを抱き、自分の活動が美術の枠に組み入れられることに対して「美術に騙されるな。工芸に騙されるな」という違和感があったのだという。

「恋愛感情がないのにずるずると付き合っている感じに似ている」という日々の中で成長していった「美術って何よ?」という思いや、「このままでははにわ(藤さんにとっての美術)に押しつぶされてしまう」という状況。「80年代半ばの雰囲気が嫌いで、美術から離れたい」と思っていた藤さんの前に突然現れた青年海外協力隊という選択肢。かねがね「学生運動の盛んだった時代ならどうぞ使ってください」という気持ちを抱いていた藤さんにとっては、「タイムスリップできる」絶好のチャンスだった。青年海外協力隊ちらし1

派遣先と決まったパプアニューギニアに旅立つ当日にオープニングを迎えた原美術館の展示では、これまでのはにわ作品の集大成となるようなインスタレーションを制作。美術館の庭にはゴジラの着ぐるみを埋めた。「美術が何たるかが分からず離れた訳ですよ」と振り返ったパプアニューギニアへの渡航は、当初予定していた60年代への「タイムスリップ」ではなく「原始時代」への「タイムスリップ」だった。年齢や婚姻制度がないことに始まり、「日本の常識」が通用しない世界を体験。これまでの価値観が崩れていく中で、「僕の人生を大きく変えた」という「ヤセ犬」との出会いがあった。

現地調査をしていた知人に会いに行くために訪れた、とある田舎での葬儀の儀式。日ごろはヤシやバナナ、イモしか食べない人々が石焼の野豚を食べるために行う「ヤセ犬」と落とし穴を使った狩。尻尾や耳を食いちぎられ、あばらが浮き出た卑屈な感じの「ヤセ犬」たちは皮膚病持ちの嫌われ者で、日ごろから弱い者、隅っこに追っ払らわれているものに興味がある藤さんでさえ、「そんな犬たちが野豚を捕まえることなんてできないな」と思っていたのだという。ヤセ犬画像1

しかし5、6匹の「ヤセ犬」は、野豚を見つけた瞬間、これまでの姿からは想像もできない獰猛さで、激しく吠え掛かり豚を追いかけていった。その瞬間を見ていた藤さんは、そんな彼らの姿に心が震え、「美しいと思って涙が流れた」という。そして「日ごろは何でもない、差別され、役に立たない存在が凄いエネルギーを得て凄い状態に変わることこそが『美術の美』だと思った」のだという。「藤浩志が何を美術として活動していこうかと思った時、『ヤセ犬』こそが美術だと思った」のだという。

「一枚の紙が、木炭のクズによって、岩の崩れたゴミみたいなものが、それを削っていくことで金銭的だけでなく、存在的にも凄いものに変化する。何でもないものに、凄いエネルギーを注ぐことで凄いものに変えていく。その思いを、僕が美術を獲得した思いを、何らかの形で残していこうと思って101匹の『ヤセ犬』を彫ろうと思った」のだという。パプアニューギニアの奥地で、日本では散々迷い探すことのできなかった「自分にとっての美術」を見つけた藤さんは、2年間の滞在期間を終え、日本という舞台の中で一人の「美術家」として活動を始めていくことになるのだった。(つづく

藤浩志さんのホームページ
藤浩志さんのブログ「Report 藤浩志企画制作室」
藤浩志さんのtwitter
藤浩志さんの超ロングインタビューが掲載されたサイト
ウィキペディア 梅原猛
ウィキペディア 青年海外協力隊
青年海外協力隊事業を行うJICA(ジャイカ)のサイト
ウィキペディア パプアニューギニア

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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