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楽しすぎ!「見っけ!このはな2010」~大阪で開催の2日間限定アートイベントを巡って~

 神戸のデザインイベントで知り合った方に教えていただいた、今日と明日(10月30、31日)の2日間限定のアートイベント「見っけ!このはな2010」。正直、ほとんど期待せずに訪れたはずなのに、終了過ぎまで作家の方々にまとわりついて話を聞いて回ったほど楽しかった。人にはそれぞれ好みがあり、誰もが満足できるイベントとは決して言えないが、少なくとも自分が感じたこのイベントの楽しさを紹介してみたい。みっけこのはなちらし

このアートイベントの最も面白かったところは、展示作品がどうこうと言うよりも、各会場を訪れた人々がアーティストが用意した枠組みに参加して自分も作品を体験しながら楽しめる遊び心のあるところ。『どんどこ!巨大紙相撲』(⑬宮本マンション)や『土木イメクラ』(⑥四貫島商店街空き地)や『缶バッチ制作』(⑧此花S-229)といったワークショップとインスタレーションが融合したような作品が多く、一歩足を踏み出して参加者の一人となれば、遊びながら作品を楽しめる。

中でも優れていたのはキスヒサタカとPOS研という2人の作品である『土木イメクラ』。ホストクラブやメイド喫茶のシステムを借用して土木作業員のコスプレをした参加者が、同じ格好の2人の作家の指導を受け、イッキ飲みコールに煽られながら穴掘り作業に従事する。遊び心満載のインスタレーションとしてアートに興味の無い子供から大人まで巻き込んだ装置としても楽しかったし、ホストクラブやコスプレといったものが成立してしまうこの国のおかしみを浮かび上がらせる作品としても優れていた。土木イメクラ

またそんなユニークなアート体験をしながら歩く此花の町は、昭和臭漂う不思議な町で、商店街の裏路地からのぞく店番のおばちゃんたちの食事風景や、古い建物の機能性を無視した構造などを見ていると、それ自体が現代アートのようでもあり、日常の細部にこそ面白みは隠されているし、身近にある小さな物事って甘く見ちゃいけないんだなとつくづく思わされる。空き家が増えている現状をなんとかしたいと3年前から始ったこのイベントだが、人の温もりの感じられるこのような町ならばぜひ住んでみたいと思った。

入り組んだ町並みを巡るカイド誘導のツアーからはぐれ、終了間際に駆け込んだ此花メヂアという場所にそれはあった。共同アトリエ兼ギャラリーとして使用されている空間は、うなぎの寝床のような作りをしており、歩くたびに床がうねるような老朽化した建物だが、その2階にある細長い階段を抜け、たどり着いた屋根裏部屋が凄かった。茶室のにじり口のような狭い入口から入り込むと、最初に見える「1982年を想え!藤浩志」という張り紙。「アーティスト藤浩志さんがそのまま保存したいと言い残している」という室内には、1982年頃のアイドルのポスターが幾つも張られ、日に焼けたまま残っている。tegami

昭和臭全開の室内の窓には2匹のウサギが仲むつましく佇む柄のカーテンが掛けられており、それをスクリーンにして映し出される内田京介さんの『水母(クラゲ)』という作品。水の中を漂うクラゲの動きを撮った映像をソファーに座り眺めているだけなら何も感じなかったが、窓の下に作品の一部のように置かれた一通の紙に目を通した後にはその空間に対する評価は一変した。1981年3月17日の夜に書かれたFumikoさんからBikichiさんへ宛てられた手紙は、まるでカーテンの柄のウサギように仲むつましい十代の二人の関係が差出人の少女の視点から語られたもの。懐かしい丸文字の文章は少女の息遣いまでも感じさせた。

「大好きなBikichiくんへ」という手紙を読み終えた後、藤浩志さんの「1982年を想え!」という張り紙を見直すと、まるでその空間全てが何かの意志でインスタレーション化されたかのように思えてきて、この恋の行く末から、まるでクラゲが漂うようにおおらかだった時代の人々の状況や時代背景までもが思い出されて、羨望と懐かしさの入り混じった感情が湧き上がってきた。果たしてどこまで意図したものであり、どこからが意図しないものなのか分からない「作品」は様々な憶測や裏読みを誘発し、極めて意味深いものとして胸に刻まれることとなった。このはな

朽ち果てた部屋を出て、昔は運河として使われていた水路に掛かる橋を渡りながら思い出した。「この町が浅草の佃島周辺に似ているのは、豊臣秀吉の時代にこのあたりに住み始めた人々が徳川家康と共に江戸に下り佃島を埋め立てたからだという」。会場の一つ、梅香堂で教えてもらった土地の歴史を思い返しながら、人はたとえばふるさとといった過去の記憶に良くも悪くも縛られるものなのかと思った。昭和臭漂うこの町でアート作品と出会いながら、朽ち逝く昭和の町並みとそんな町並みの中で様々な記憶を抱えて生きる人々の姿を美しいと思った。

みっけ!このはなのウェブサイト
ウィキペディア インスタレーション
ウィキペディア 佃(東京都中央区)

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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