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「せめぎあうアートの現場」~京都、10月、ギャラリー巡り~

 8月に行われた京都芸術以来、その熱量は関西に拡散しつつあるという漠然とした予感のままに、BIWAKOビエンナーレや兵庫のアートフェスティバル、大阪のアートイベントなどに参加していたこの2ヶ月。京都のことがおろそかになりつつあった中で、久しぶりに巡った京都のギャラリーは、しっかりと熱量を保ちながら、優れた作家たちを紹介していた。そんなギャラリー巡りの中で出会った作家や作品について作家本人の言葉も交えながら紹介してみたい。ミロと竜馬

今回のギャラリー巡りで運が良かったのは、ぜひ紹介したいと思っていた3つ個展の会場の全てに、その作品を制作した作家さんがいたことだった。一つ目に訪れたMATUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/wでは、何の期待もせずに入った室内で、現代美術二等兵という方のミロのビーナスを坂本竜馬化した作品の、あまりのくだらなさに吹き出してしまった以外には何もないだろうと高をくくっていたが、その奥にあった唐仁原希さんの絵画作品に打ちのめされることになった。

アニメキャラクター以上に大きな目をした少女たちを描いた作品は、以前、『有毒女子』展というグループ展で観たことがあり、どちらかと言えば好きになれないキャラクターだったのだが、今回の展示の中の最大の作品《麗しき血の乙女達》の前に来ると、ふと足を止める気になり、「この作品に込められた意味のようなものがあるのでは?」という気がして画面に向かい合ってみた。するとどうだろう、それまでほとんど訴えるものの無いように思えていた作品の中から、様々な意味性が浮かび上がって来た。《麗しき血の乙女達》

上半身は少女、下半身は馬というケンタウロスのような女性たちが、男性ジョッキーを乗せ、競馬場を競い合う姿は、以前、椿昇さんがトークショーでAKB48を評して言った、「お互いが追い落とし合いのゲームをしてて血と肉の匂いがした」という世界観に極めて近くないだろうか。あばら骨が浮き出る程に痩せた少女たちは、胸や素肌を露わにして熾烈なレースを戦っており、そのレースの判定基準となるのは睫や鼻や胸といった外見のパーツ。そしてレースに参戦する「かわいい」彼女たちに騎乗するのは、手に鞭を持ち無表情で勝負服を着込んだ男性ジョッキーたち。

競馬場というクローズド・サークル内で繰り広げられるレースは、クラビアアイドルなどを含めたある一部の芸能界の状況だけでなく、キャバクラやアダルトビデオ、性風俗産業などをも含めたこの国の女性の容姿や若さばかりを消費しようとする歪んだ在りようを告発しているようにも思えなくもない。一見華やかに見える女性たちのレースの裏にあるいびつなルールや過酷な競争。そしてその競争から真の利益を上げていく、そのシステムの構築者や投資家という名のギャンブラーたち。淡水魚に憧れて

そんな社会批評的な見方をしていると、ギャラリーいた母と娘のような人々と言葉を交わすことになった。この作品の自分なりの視点の基づいた「凄さ」について母親のような女性と話していると、すぐ横にいた大学生風の女性から、「あっ、私が作家です」との声が発せられた。どうやら観に来ていた女性を案内していたらしい唐仁原希さんは、京都市立芸術大学大学院修士課程の2回生という。今回の作品については「社会批判的、文化的に思っていた訳ではないけれど、血統とかイメージを統制されて整わされてたというのはあって…」という意味は込めていたのだという。

しかし《麗しき血の乙女達》に次ぐサイズの作品《淡水魚に憧れて》という作品でも、「地球上に存在する水辺の99.7パーセントを締める海水にではなく、0.3パーセントの場所でしかない淡水に憧れを持つ人魚たちを描いた」という意図があることから考えると、そこにも今を生きる若い女性たちの息苦しさやリアリティーのあり方が描かれていると思わずにはいられなかった。縦2m25、横5mの大作を、「これほど凄い作品はぜひ美術館なんかが購入して多くの人に見てもらった方がいいのに」と言葉を掛けると、若い作家は多少戸惑いを見せながらも微笑んでいた。biwakogazou1

その日巡った7つのギャラリーの内、紹介する残り2つの個展は、デジタル写真が登場したことで始った絵画と写真、デジタルとアナログ、写実と抽象といった境界線のせめぎ合いを追求する中から生まれてきた表現のように思えた。BIWAKOビエンナーレで連続するパターンのように続く湖のさざ波の写真を見て以来、他の作品も観てみたいと思っていた杉浦慶太さんの個展(10月23日で終了)では、会場である京都万華鏡ミュージアム内のギャラリーに新作を含む約10点が展示されていた。

一見するとペインテングのように見えるそれらの作品だが、実は大判のカメラで撮影された森や雲、夜の闇に浮かび上がる田舎の運動施設が写されたもの。琵琶湖の作品と同系統の森や雲をモチーフにした作品には、シンプルに対象と向かい合う杉浦慶太さんの作家としてのストイックな面が見受けられ興味深かったが、それ以上に引き付けられたのは、「惑星♯005」と名づけられた運動施設の作品。「東京での仕事が上手くいかず、実家に帰らずにいられなかった時に撮ったもの」という写真は、はるかに俯瞰した距離からの宇宙を思わせる闇と、そこでささやかな営みを続ける人々の生み出した光を対比した作品だった。《惑星》

「今までにない表現をしていきたい」と語る杉浦慶太さんの作品は、「正規に写真教育を受けてないから、自分が育ってきたサブカルの中からサンプリングしたものが自然とミックスされている」という一面もあるのだという。その絵画と写真表現の境界線を探るような作品を観ていると、今現在、アートの世界で起きているデジタル技術の発達や、その表現を自分のものとした世代の出現に伴う、デジタルとアナログ、写真とペインティングなどの表現のせめぎ合いや試行錯誤が、今回の展示を含む様々な場所で同時多発的に起きているのだと感じずにはいられなかった。

最後に紹介するMORI YU GALLERY KYOTOで行われていた五十嵐英之さんの「速度と遠近法、時間と焦点」というタイトルの個展(11月13日まで)では、デジタルとアナログ、写真とペインテングとのせめぎ合いをより意識的、実験的に試みた作品で会場全体がきっちりとまとめられていて心地よかった。ギャラリー1階の左面に続く一見するとデジタル写真かと見間違うオイルペインテングの作品と、その奥に置かれた理論上は永久に退色しないというデジタル写真の作品は、同じモチーフを用いながら鑑賞者に2つの間にある境界線を横断させ、そこに生じる揺らぎを味わわせる不思議な感覚の作品群だった。igarasisanngazou1

それらの作品の向かい側にある流れる風景を油彩化した作品群、そして正面や2階の壁面に掛けられたゴッホとモリゾの肖像画を点描化した作品では、「速度や遠近法」、「時間や焦点」というテーマを通して、写真機の登場が印象派の誕生といった絵画史に与えた影響と同じように、デジタル技術の発達がこれからのアートや人々の表現に大きな影響を与える変革期にきていることを個々の作品と全体の関連性から読み解くこともでき、コンセプトの組み上げ方にも優れた手腕を見せていた。

「16年前、コミュニケーション障害のある子に会って、メモやマークを写しあうコミュニケーションが16年間続いてきて、彼の描いたものと私のものが分からなくなる面白い経験の中から、私とあなたの境界が分からなくなっていくというような気づきがあって、現実とそれを『写す』写真と絵画という3つの段階があることに興味を持った」という問題意識から生まれた作品は、様々表現手段のせめぎ合いの中で生まれた境界線の不明瞭さを、制作の現場から見定めようとする実践の結果のようにも思われた。igarasisanngazou2

今、アートの現場で行われている現実の洗い出しや、その現実を表現する手法への試行錯誤の背景には、社会状況の急激な変化や、これまで存在しなかったテクノロジーの発達によって過去の手法では見通せなくなった今の時代のリアリティーをそれぞれの作家なりの手段で掴み取ろうとする試みのように思えてくる。そんな様々な試みによって生み出された作品を鑑賞していく中で、今という時代の息吹を表現できる言葉を見つけていきたいと思った。

MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/wのウェブサイト
ウィキペディア ケンタウロス
ウィキペディア クローズド・サークル
現代美術二等兵さんのウェブサイト
唐仁原希さんのウェブサイト
ウィキペディア 椿昇
ウィキペディア AKB48
杉浦慶太さんのtwitter
MORI YU GALLERYのウェブサイト
ウィキペディア 印象派

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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