スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
関連エントリー
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - スポンサーサイト
関連エントリー
関連エントリー

「秀作展としてのトリエンナーレ」~あいちトリエンナーレ2010を巡って・後編~

 前編ではアートフェスティバルとしての「祝祭感」や、「伝えたいこと」の無さについて批判したあいちトリエンナーレだが、「作品展」としては国内や海外の作家の優れた作品を見れた部分もあり、全体としては物足りなかったとしても、部分としては優れたものもあったというのが正直な感想だった。後編では批判だけが全てではなかったこのトリエンナーレの「秀作展」としての部分に焦点を当ててみたい。あいちトリエンナーレ画像1

名古屋を訪れてからすでに1ヶ月が過ぎ、トリエンナーレも残すところあと10日ほどとなった今でも、きちんと思い出せる作品が多かったのが愛知芸術文化センターの展示。その中で最も印象深かったのがハンス・オプ・デ・ビーク(ベルギー)の「Staging Silence」という映像作品。固定カメラが映す空間に、ミニチュアの家具や電球、綿といった何の変哲もない素材を配置することによって生まれる詩情感は魔術的と言えるほど。

極めて舞台美術的な場面の転換により、一瞬で観る者に詩情を湧き上がらせる巧みさには、あまりに容易に感情を揺さぶられることに対する悔しささえ感じられる凄みがあった。流れるようにスムーズに行われる場面転換と情景の作り出す詩情を大画面で鑑賞していると、約20分という時間さえも忘れて見入ってしまう。空間づくり手の内を明かしながら、その奥にある秘密には決して手が届かないという作品には、作家の持つ圧倒的な芸術スキルがうかがえた。砂漠画像1

同じ映像作品でも、様々な手法で心に残る作品を鑑賞できた今回のビエンナーレ。芸術文化センター8階のヤコブ・キルケゴール(デンマーク)の「流砂」の作品は、自然が作り出す変化の多様さや、ゆるやかに、しかし確実に崩れ落ちていく砂のあり方に今の時代の崩壊感や蟻地獄に飲み込まれていくような下落感を感じずにはいられなかった。他にも長者町会場のアデル・アブデスメット(アルジェリア)の蛇やサソリ、毒蜘蛛が映された作品には芸術が決して美しいものだけでなく、時には不快な感情をも鑑賞者に投げかける可能性も内包したものだということを教えてくれた。

西洋の作家だけでなく、アジアの未知の作家に出会えたのも今回の収穫といえるだろう。急成長を見せるインドの作家、ソニア・クーラナは自らの身体を世界各地の路上に横たえることによってその空間を異界化し、それによる違和感を人々に与えるという映像作品で、60年代のオノ・ヨーコや草間彌生の活動を思わせる緊張感のある作品を提示。1984年生まれのジュー・チュンリン(シンガポール)は透明プラスチックを多用したインスタレーションとその空間増殖性を映像化した作品で、名古屋の街のストリート感をユニークに表現した。ジャン・ホァン作品集画像

アジアのメインプレーヤとなりつつある中国国内だけでなく、すでに世界的評価を受けている蔡國強(ツァイ・グオチャン)の作品が観れたことも印象深かった。県美術館の最も広い空間の壁面一杯に展示された「美人魚」は今回のトリエンナーレのために創られた新作で、火薬を用いたドローイングから感じられる痛みや、水中を泳ぐ女性の影から生まれる淡さなど、制作過程を撮影した映像と共に鑑賞でき、10億円で落札されたこともあるというこの作家の実力を体感できた。また同じく中国の張洹(ジャン・ホァン)の牛皮の継ぎはぎで作られた巨人の造形物「ヒーロー」も、中国人作家のスケールの大きさや、淡い哀しみが感じられた良かった。

各国の優れた作家たちの中で、それに劣らない日本人作家の作品があったことも嬉しかった。宮永愛子は名古屋という地域性を取り入れた塩、ナフタリン、舟で構成されたインスタレーションで詩情溢れる空間を創り出すだけでなく、作家の内面をポストと鍵で表したであろう作品でもその実力を示した。注目の新人として写真界で話題の志賀理江子は、この国が持つ歴史的闇や得体の知れない存在を「開いた感性」で切り取り、無造作に提示する独自の作品空間を生み出し観るものに強い印象を与えた。志賀理江子「CANARY」

このように優れた作品を観ることができたあいちトリエンナーレは、10月上旬段階で目標の来場者数30万人を突破。最終的には40万人に近い来場者数が見込まれているという。しかし9月上旬の2日間にわたり見た限りでは、国際美術展と銘打つわりには外国人の来場者を見なかったし、サテライト企画のような周辺へ波及したイベントも少なかったように思う。国内のアートフェスティバルの中では最高額の13億円以上をつぎ込んだトリエンナーレだけに、行政が旗を振る古い体質のイベントという殻を破った、芸術の持つ幸福感が拡散していくような「あいち」ならではのトリエンナーレが観たかったように思う。
前編へ戻る

ウィキペディア あいちトリエンナーレ
あいちトリエンナーレ ウェブサイト
ウィキペディア オノ・ヨーコ
ウィキペディア 草間彌生
あいちトリエンナーレ ジュー・チュンリン紹介
ウィキペディア 蔡國強
張洹(ジャン・ホアン)さんのウェブサイト
志賀理江子さんのウェブサイト
アマゾン 『Zhang Huan (Contemporary Artists)』
アマゾン 志賀理江子『CANARY(カナリア)』

 【関連記事】
「果たして名古屋は熱いのか」~あいちトリエンナーレ2010を巡って・前編~
『アートが創る熱い夏』~瀬戸内国際芸術祭2010「直島」を巡って~その1
「極めて優れたビエンナーレ」~BIWAKOビエンナーレ2010を巡って~
「なぜ中国現代アートは熱いのか」
「圧倒的な廃墟感」~瀬戸内国際芸術祭2010「犬島・精錬所」を巡って~
「拡散するアート、又はコンセプチュアルアートとしての¥2010 exhibition(2010円展)-Final」by0000 Gallery(オーフォギャラリー)を体験して
「決断の先にあるもの」~ソフトバンクアカデミア第2回戦略特別講義「意思決定の極意」孫正義さん講義を聴いて~
「伝統に囚われない強さ」~ 『青木良太展』小山登美夫ギャラリー京都版とeN arts版の2つを観て~
「自分だけの答え」~京都造形芸術大学・大瓜生山祭、椿昇さんが参加したトークショーを聴いて~
「なぜ村上隆さんは批判されるのか?」~ニコニコ生放送・村上隆 ベルサイユ宮殿より生中継を見て考える~
「新たなリアル」~今、アートと社会の中で何が起きているのか~
「かなり残念なイベント」~文化庁メディア芸術祭京都展・宮本茂さんと養老孟司さん講演を聴いて~
凄すぎる!村上隆さんの本気in台湾
「忍び寄る悪夢」~兵庫県立美術館コレクション展・束芋『dolefullhouse』(ドールフルハウス)を観て~
「幾つもの架け橋」~「京都芸術」トークイベント第二部「京都でアートを見せること」を聴いて~
0000(オーフォー)の現在(いま)~0000が関連した3つの「京都芸術」イベントを観て~
「遭遇、梅佳代さん」~梅佳代写真展「ウメップ」シャッターチャンス祭りinうめかよひるずを観て ~
京都ボスキャラの集い~京都藝術オープニング「SANDWICH(名和晃平さんのスタジオ)×仔羊同好会イベント」に参加して~
「スーパーリアルな革命」~「京都芸術」に関連したKyoto家Galleryを巡って~
「萌え+ドーパミン=最強」BOME×村上隆トークショーを聴いて
カオスラウンジの意味
GEISAI大学討論会での黒瀬陽平さんのヘタレ受けの見事さ
エヴァ的に解釈するGEISAI大学放課後討論会
超解釈!『ネットワーク時代のクリエイティヴィティ「神話が考える」をめぐって福嶋亮大×浅田彰』
『海洋堂前史』~京都国際マンガミュージアム・フィギュアの系譜展を観て前編~
超簡略!私的見解込み「孫正義 vs 佐々木俊尚 徹底討論 『光の道は必要か?』」 
「孫正義にみる言葉の力」~ソフトバンクアカデミア開校式『孫の2乗の兵法』Ust(ユースト)を聴いて~
「ありふれたものの凄さ」~建築家・藤森照信さんの「土と建築」講演を聴いて~
「光の中の少女たち」~京都国際マンガミュージアム『村田蓮爾展』とライブペインティングイベントを観て~
「確かに面白くはあったのだけれど…」メイドラウンジin台湾~「カオスラウンジ・オープニングイベント」ニコニコ生放送を観て~
超個人的「ワンダーフェスティバル(ワンフェス、WF)」2010夏、体験レポートその1「開戦前場内」
ムーブメントを生み出すために~メディア芸術フォーラム大阪・シンポジウムに参加して~
カオス(ラウンジ)世代のリアリティー~くまおり純の場合~
極めて葬送的な『ハートキャッチ!かおすら!』ユーストを見て
『死なないための葬送』としての『はめつら!』
カオスラウンジの何が凄いのか~関西初上陸、『かおすら!』展を見て~
凄かった!京都造形大『FRESH MEETING!(フレッシュ ミーテング)』
会田誠さんのジレンマ、そして可能性
カオスラウンジで注目の黒瀬陽平さんが投げ掛けた問い
ユーストリーム(Ustream)配信失敗の教訓
先入観を捨てて読め!高城剛『ヤバいぜっ!デジタル日本』
デジタル技術の進化における模倣や複製の可能性
スポンサーサイト
関連エントリー
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - 「秀作展としてのトリエンナーレ」~あいちトリエンナーレ2010を巡って・後編~
関連エントリー
関連エントリー

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

全記事表示リンク
全ての記事へのリンク(ジャンル別)

全ての記事を表示する

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
ユーザータグ

京都 歴史 アニメ 映画 秀作 動画 日本 美術 洋画 古典 講演 現代美術 傑作 ギャラリー  YouTube 舞台 京大 建築 江戸時代 探求 イベント マンガ 庭園 大阪 寺社 寺院 物理 宇宙 アート 監督 紅葉 美術展 ラブストーリー 奈良 国宝 ノンフィクション グルメ フランス 見学 時代劇 アクション 音楽 ドキュメンタリー  タイトル 世界  歌舞伎 押井守 仏像 攻殻機動隊  涼宮ハルヒ I.G 神山健治 くせになる 悲劇 博物館 鎌倉時代 東京 Production Youtube 解説 戯曲 魔術 リアル 詩情  前衛 広島 芸術 化物語  戦争 菩薩 お寺 離宮 仙人 茶室 医療 西洋美術 個展 香港 デザイン 皇室 絵画 邦画 テレビ 枕草子 漢詩 闘病 原作 宮崎駿 旅行 長谷川等伯 IG シェイクスピア 講演会 滋賀 トークショー 狩野探幽 海外文学 出会い 洋楽 日本画  祭り 荒唐無稽 中国 ジャンル   ニコニコ 二次制作 報告 肖像画 和歌 探求京大 思想 ヨーロッパ 印象派 ゲーム 手塚治虫 笑い 

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
フリーエリア
FC2 Blog Ranking 人気ブログランキングへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。