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「なぜ中国現代アートは熱いのか」

 あいちトリエンナーレで蔡國強(ツァイ・グオチャン)や張洹(ジャン・ホァン)の作品を観たり、香港のアートフェアーの熱気を間接的に聞いたりする中で、どうやらサブプライム以降も中国のアートシーンは熱いらしいということは理解していたが、ではなぜ熱いのかという疑問がいつも頭の中にあった。経済成長中の勢いを持つ国という大前提以外にも、何かしらの背景があるのではという思いを確認するために行った京都大学人文科学研究所での『「中国の現代アート」-今を生き抜くための表現-』という講演。中国現代アート史を紐解いていく中で見えてきたその熱さの理由を説明してみたい。蔡國強画像1

2日間かけて巡ったあいちトリエンナーレの中で最も質の高かった愛知芸術文化センターの展示。そこにある県美術館の学芸員・中村史子さんが講師となり行われた講演は、まず現代アートとは何かという枠組みを捉えることから始った。「日本では主に戦後に登場したアートのこと」という定義づけで進められた中国の第二次大戦前後の美術は、国内政局の混乱や日本軍の侵略などで海外のアートの動きを取り込んで熟成させるだけの時間がほとんどなかったのだという。

また戦後から中華人民共和国の成立、さらにそれに続いた文化大革命によって奨励された芸術は、毛沢東様式と呼ばれる共産主義をプロパガンダ(宣伝)するためのものであり、画家自身の表現でなく、文字の読めない人々にもポスターなどで共産主義を伝えていくという当局の意向を反映したものだった。人物表現の気高さや、正面を向いた人々の姿、共産党のシンボルカラーである赤を多様した色彩などがその様式の特徴で、文化大革命が終了する1977年までは、その様式一辺倒となり、それ以外の表現や文化大革命の思想にそぐわないものは抑圧され、時に厳しい刑罰が加えられた。中国のプロパガンダ芸術画像

そんな中国の美術界が文化大革命の終了により、大変革を迎える。海外の書物の流入などにより、それまで知られていなかったセザンヌ以降の欧米の芸術表現が大きなショックを伴いながらも吸収され、1979年には中国現代アートの最初の一歩ともいえる第一回星星美術展が中国美術館東側空き地で開催。しかし開催の翌日には前衛的な動きが当局の弾圧対象となり作家数名が捕らえられ、展覧会は中止。このような苦難の船出が象徴するように、中国現代アートはその後も作家たちの表現の自由の獲得と、民主化への望みを託した活動として展開していった。

1983年、当局側の「反精神汚染キャンペーン」という裸体絵画などを取り締まる動きや、その抑圧に呼応するかのように起きた八五美術運動という現代アート集団の同時多発的な発足。中でも廈門(アモイ)ダダというグループは展覧会終了後に展示作品の全てを焼却してしまうという過激なイベントを行い八五運動の中心となった。さらに1989年2月には中国現代芸術展が中国美術館という国内で最も権威のある美術館で開催され、その中の作品が政治的、社会的に物議を醸すなど現代アートが社会に対して大きなリアクションを生み出すこととなった。天安門広場

しかし、そんな動きも同年6月4日に起きた天安門事件(第二次)によって壊滅状態となる。すでに監視の厳しさに国外へ逃亡や移住していた黄鋭(ファン・ルイ)ヤ艾未来(アイ・ウェイウェイ)のように中国国外での活動を余儀なくされる者、事実上不可能となった自由な表現をあきらめ、しらけた態度で傍観する者、地下活動的で過激な表現を当局の目を盗んで行う者などに分かれていった。そんな中には北京郊外の東村という村で過激なパフォーマンスを行った張洹(ジャン・ホァン)、女性的な容姿を武器に抑圧と戦った馬六明(マ・リウミン)など内に秘めた抵抗を内的衝動として活動していく者たちもいた。

それらの表現が国外に住む艾未来(アイ・ウェイウェイ)などにより紹介され海外で評価を受けていった結果、1999年には蔡國強(ツァイ・グオチャン)がヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞受賞、黄永砅(ホアン・ヨンヒン)がヴェネツィア・ビエンナーレのフランス代表として出品するなど中国現代アート全体が知名度を上げていった。中国当局も2000年の上海ビエンナーレ以降は上海多倫現代美術館の開館や798北京大山子芸術区を支援するなど、現代アートを国家戦略の重要な柱としていく。政治的に過激な表現は規制されていても、ある一定の自由を認めるようになった現在では、「単純に反体制という視点は通用しなくなっており、グローバリズムの中での中国らしさ」を模索する時期にきているという。798芸術区画像

このように今回の講義は中国現代アート史が非常にわかり易くまとめられており、返還前の香港や台湾にしか行ったことのない人間にも、その魅力が歴史の流れを通して伝わってくるものだった。最後に設けられた質問の機会に、「では中国や韓国の現代アートの勢いと、日本のアートの停滞した現状の違いはどこにあるのか」と訪ねてみた。すると中村史子さんは「国が予算や力を入れているか、国家戦略としてブランド化しようとしているかの違い」と即答。それに続いて具体例を挙げながら解説がなされたが、一般化しすぎた意見を信じないようにしている人間には、腹の底から納得する答えではなかった。

講演が終わり、中村史子さんやその周辺の若い人々と話していく中で知ったことは、「中国におけるアーティストのイメージはカッコイイ」というものであり、「上海ビエンナーレではアートに関係ないような人々まで作品の前で集合写真を撮ったりしているという日本ではありえない状況がある」というものだった。それを聞いて思ったことは、政治的、社会的抵抗を行ってきた第1、第2世代の自由を求めた表現が世界に認められていく中で、確実に次の世代の優秀な人材がその姿や成功体験に憧れてアートの世界に飛び込んでいったこと。そしてその憧れは中国国内のマーケットで自国の作家の作品を買い求める状況をも作り出していることだった。艾未来(アイ・ウェイウェイ)画像2

中国より以前に高度経済成長を経験したこの国で、なぜ国内のマーケットが育たなかったのか、アートが一般の人々にまで普及しなかったのかは、そういった憧れ、人材、資金の流入という好循環が生まれ得なかったことに起因するのではないか。未だ一部の人にとっての現代アートでしかないこの国の現状を変えていくには、芸術やアートの世界に関わる人だけでなく、一般の人々の心にまで届く「貫通力」のある作品を多く作家が制作していく以外に道はないのだと思った。

ウィキペディア あいちトリエンナーレ
あいちトリエンナーレ ウェブサイト
ウィキペディア 蔡國強(ツァイ・グオチャン)
ウィキペディア サブプライムローン
ウィキペディア 文化大革命
ウィキペディア 六四天安門事件
ウィキペディア 艾未未 (アイ・ウェイウェイ)
ウィキペディア ヴェネツィア・ビエンナーレ
ウィキペディア 798芸術区
アマゾン 牧陽一著『中国のプロパガンダ芸術―毛沢東様式に見る革命の記憶』
アマゾン 『AI WEIWEI―ACCORDING TO WHAT?』

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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