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「拡散するアート、又はコンセプチュアルアートとしての¥2010 exhibition(2010円展)-Final」by0000 Gallery(オーフォギャラリー)を体験して

 5月の1回目のイベントに参加した時は、まさかここまでのスケールになるとは思いもしなかった「2010円展」。そのファイナルと銘打って行われる3回目のイベントが、大阪・心斎橋にある大丸北館で開催されると知った時はさすがに驚いたし、同時に身近にいたインディーズバンドがメジャーデビューしていくような寂しさも感じた。まあそんな個人的な感情はさて置き、この「展覧会」が持つ本当の意味について考察してみたいと思う。2010円展ちらし画像

これまで開催された「展覧会」の全てにに参加している者として断言できることは、購入された作品がその場でお持ち帰りとなるこのイベントが一番楽しめるのは、開始日初日の数時間ということになる。その時間帯には先を争って買う価値のある作品が揃っていることが多いし、何よりこの「展覧会」のコンセプト、「作品を観るだけでなく選んで買う」という楽しみが一番味わえる時間帯なのだ。

そんな経験則から向かった大丸心斎橋店北館には開始時間の10時から約30分ほど遅れて到着。前回までの「婦人服売り場のバーゲンセール状態」を知っているだけに、目ぼしい作品は売れてしまっているかもと心配しながら到着した北館9階エスカレーター付近には、水色の伊達メガネをかけた0000メンバーの緑川さんが、案外暇そうに立っていた。¥2010展画像1

8つのフロアーに分散展示される今回の「展覧会」の8、9階は、エスカレーター付近の通路スペースに高さ2メートル、幅8メートル程の白い壁を設置し、そこに約200点づつの絵画、イラストを中心とした作品を無秩序に展示するという、基本的に前回までのスタイルを踏襲した形式が採られていた。9階は平日の開店直後のベビー・子供服売り場ということもあってか、「観客」はまばらで、拍子抜けしてしまうほど。

その分、緑川さんや、ボランティアスタッフの方々と今回の「展覧会」や、それぞれの作品についての話を聞きながら作品を選べるメリットがあって楽しかったが、2ヶ月に満たない準備期間ということもあってか、作品全体のクオリティーは前回、前々回には劣るように思えた。しかし2010円にしては絶対お得、という作品に向かい合っていると、他の購入者との競争心が湧き起こり、気づけば財布が軽くなっているという、バーゲン売り場状態。
¥2010展画像2
そんな8、9階の「展示」を楽しみ、「2階から7階までは約60のショップの中に置いてもらっている」という展示を観だした時に感じたこれまでにない感覚。2階の男性ファッション売り場の時はそれほどでもなかったが、3階から7階までの婦人服売り場で洋服や小物に混じり、まるで宝探しのようにして探さなければならない作品を観るためには、足を踏み入れたこともない女性ブランドショップ内に踏み込まなければならず、そこには不思議な「越境感」があった。

ショップの店員の方々も、平日昼間の婦人服売り場をうろつく男に違和感を感じられていたようだが、こちらが「絵を観に来ました」と声掛けると、大抵は気さくに対応してくれ、中には今回の企画やその方の好きなアート作品について話し込んでしまうなど、アートが生み出す「越境的出会い」が体験できた。それはまるで瀬戸内やBIWAKOのアートフェスティバルで体験した出会いと同じで、社会的属性を留保した極めて私的で風通しの良い関係だった。¥2010展画像4

一通りの買い物を終え、そんな出会いを生み出した「展覧会」について考えていると、ちょうど今回の企画について、ショップの方々に説明して回っていた0000の谷口さんと、主催会社の担当の方に遭遇。谷口さんにその意図を聞いてみると、アート側の視点よりもファッション側の視点から、「展覧会に来ない方とか、服を買われる方にファッションを買うようにアートを買ってもらう『展覧会』」とあくまで「展覧会」であることを強調。

そこにはアート界隈よりも、その周辺や外側にいる人々を巻き込んだ動きを作り出したいという思いを強く感じた。3時間ほど滞在した会場を後にし、心斎橋周辺のギャラリー巡りをしていく中でも、「アートの販売網がないのを、こういう風に広げていく試みは初めてではないか」という言葉が、いつまでの残り続けた。その日はギャラリーよりも、偶然入った洋服店や、茶道具店、タトゥーショップの店員の方々との会話の中に収穫が多く、そんな言葉の数々を反芻しながら帰る電車の中で、ふと思いついた。心斎橋画像1

「もしかすると、今回の『2010円展』という『展覧会』は、最近国内で起きているアートフェアーや、村上隆さんを中心とした動きが示す、『社会におけるアートの拡散』という形の一つの表れであり、この国で独自に発展してきた『デパートアート』というものが、催し物会場から各フロアーへ拡散したという状況を生み出したという点では、極めてコンセプチュアルな意味合いを持つのではないか?」

それは「GEISAI」というアーティストがダイレクトに作品を販売するイベントや、自作フィギュアの縮小版をコンビニで販売したり、最近では「買えるブルータス」の企画としてオンライン上で作品購入できる手法を取り入れた村上隆さんの「アートの流通経路の変革」という挑戦の延長線上に立つ行為であり、そんな基本コンセプトの共通性があるからこそ、アートバトルロアイヤル(ABA)以降の村上隆さんと0000との接近が生まれ得たのではないだろうか。¥2010展画像2

90年代以降、美術館からギャラリーへ、そこからさらにアートフェスティバルやpixiv(ピクシブ)といったネット上など、様々な場所へと拡散し続けるアートは今、各地で開催されるビエンナーレ、トリエンナーレなどを一つの装置として、より多くの人々へ拡散し続けようとしている。京都にある20代の4人が半年ほど前に始めたギャラリーが、大丸という近畿圏では最もメジャーなデパートの一つと組んでおこなった「2010円展」という企画展は、この国のアートの今を象徴する一つの作品として成立し得ていると思う。

0000 Galleryウェブサイト ¥2010 exhibition-Final at大丸心斎橋店のページ
大丸心斎橋店ウェブサイト
0000arts(オーフォーアーツ)のtwitter
ウィキペディア コンセプチュアルアート
ウィキペディア 大丸
ウィキペディア 瀬戸内国際芸術祭
瀬戸内国際芸術祭2010ウェブサイト
BIWAKOビエンナーレのホームページ

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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