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「極めて優れたビエンナーレ」~BIWAKOビエンナーレ2010を巡って~

 夏に始った大規模アートフェスティバル(瀬戸内国際芸術祭や、あいちトリエンナーレ)が一段落した関西周辺では、この時期、中、小規模のアートフェスティバルが次々と開催される。いくら芸術の秋といっても、ちょっと多すぎではとも思いながら、この際、足を運べるものには全て足を運んでやろうと計画している第一弾として、週末に巡ってきた奈良アートプロムとBIWAKOビエンナーレ。それほどアートが根付いてない土地で、草の根レベルから始ったという経緯や規模が似た2つのフェスティバルの先輩格にあたるBIWAKOビエンナーレは、もし関西近辺に住むアート好きなら絶対見ておくべきと断言できるほど凄いものだった。BIWAKOビエンナーレちらし

2001年の初開催からすでに4回を数えるBIWAKOビエンナーレ。知名度は低いながらも、その歴史は国内のアートフェスティバルの優、越後妻有の大地の芸術祭や横浜トリエンナーレと肩を並べるほどのもの。そんなBIWAKOビエンナーレの10年目を飾る今回のイベントの一体何が凄いのかと言えば、過去の歴史と現代のアートが融合した空間。2004年の2回目から会場を滋賀の近江八幡という街でもなく田舎でもない場所に移して開催を続ける意味もわからず、半信半疑で降り立った近江八幡駅。駅からさらに旧市街の八幡堀周辺まで行かなければならないと知って、500円でレンタサイクルを借り、約12分ほどで会場に到着。方向感覚もつかめないままたどり着いた⑦西川邸(離れ)から鑑賞は始った。

以前、仕事の関係で交流させていただいた杉浦慶太さんの写真作品が展示された空間は、いかにも長年放置されてきたことのわかる日に焼けた畳具合や、建売建材の色落ち感が漂う空き家で、その中で日本画を思わせる杉浦さんの琵琶湖のさざ波を撮影した黒っぽい写真作品を見ていると、その建物が改築されたであろう昭和40年代と今の時間が交錯して、不思議な気持ちにさせられる。また空き家という状況を生んだ今の日本の閉塞感と、さざ波の黒さに何かしらの共通項を見出したくなり、そこにいたボランティアの方と長々話しこんでしまうだけの魅力があった。BIWAKO作品画像4

気を良くして回りだした会場の、ほぼ中央に位置する⑤カネ吉別邸は、迷路のように入り組んだ室内を巡るだけでも楽しいが、築100年以上の町屋という純日本風の空間とそこに展示された現代アートが生み出す幻想的な雰囲気は、建物と作品の相乗効果無しでは決して生まれ得ないもの。広間に置かれた田中真吾さんの白い箱とその箱が火に焼かれた跡を鑑賞する作品、建物中程の土間で宙吊りにされた包帯で作られた白いウエデングドレス(寺田忍さん+真木三起さん)は伝統的空間と西洋的存在とが生み出す違和感がより作品の存在を引き立てる方向に作用して、今ここでしか味わえない世界を創り出していた。

他にもカネ吉別邸では、石田歩さんの機関車や古い建物の立体造形、写生画などが高密度に詰め込まれた室内や、家屋最奥の土蔵で光を放つ十字架作品(ヴェラ・ロームさん)など空間と作品が融合したことによって生まれる特異な雰囲気が成立していて、ここに来なければ見れないというこのビエンナーレの独自性が感じられた。同じく⑥藤田邸という町屋の内部に展示したことでより幻想感を高めることに成功した藤居典子さんの鉛筆画。幻想的作品に食傷しだした頃に見た総合案内所でもある①天籟宮の竹田直樹さんの「流木信仰について」という謎のタイトルのついたベッドと照明を使ったインスタレーションは、日本家屋が持つおどろおどろしさと巧みに取り入れたもので、8800円でその空間に宿泊できるというオプションも含めて優れた作品となっていた。青木美歌作品画像A

最後は雨に降られながらも、6時間で15会場を巡った中で最も優れた展示は、ガラス造形を表現手段とする青木美歌さんの⑨幸村邸(隠居)にあるインスタレーション。壊れかけた町屋の畳敷きの空間中央に配置された長持(大型の着物入れ)。雨戸を締め、極力光を排除した室内に浮かび上がるのは長持内部から漏れてくる黄色い光と、室内に胞子や菌糸のように生じ、あるいは浮かんだガラスの造形物を照らす青白い光。作家によれば「江戸時代から続く町屋の、生命の受け継がれていく場としての意識があって、霊魂や精子みたいなものが卵巣的な光を放つ長持にあつまっている様子をイメージした」という作品は、その空間の持つ歴史性や、作品の細部にまで様々な意味性を考えさせる「開いた作品」としての完成度、今の日本やアートの時代感覚に生じている「廃墟感」など鑑賞者の想像力をかき立てる要素が幾層にも積み重ねられており、直島で見た「家プロジェクト」に匹敵する凄さを持った作品世界が提示されていた。

幸村邸では、この他にも古いホウロウの流し台と造形物を使って、夜の打ち捨てられた台所の硬質で冷え切った感覚と不気味さを兼ね備えた作品や、透明な珊瑚のような造形物が青白い光に照らされて浮かぶ美しさと繊細さを感じさせる作品も展示されており、この作家の実力が只者ではないことを知ることができた。最後に回った⑮願成就寺の植松永治さんの作品のレベルの低さは別にして、台湾作家、フン・チワンさんのチープながらも龍安寺の石庭などを連想させるダンボールを積み上げた作品や、阿曽藍人さんの日本庭園内に大型の球状造形物を配置することで不思議な光景を作り出した作品、瓦工場の2階隅を大量の割り箸でインスタレーション化した田中太賀志さんの作品など観る価値のある若手作家の作品に頻繁に出会うことができたこともこのビエンナーレを高く評価したくなる理由。BIWAKO作品画像11

江戸時代、近江商人(高島屋や伊藤忠商事、丸紅などが流れを汲む)の発祥の地として莫大な富を蓄積していたこの街に、贅の限りを尽くして建てられた町屋建築は、今はその影を見ることがない程に荒廃し、あるものは忘れ去られ、またあるものは無価値なものとして破壊され、すでにその形を留めるものもは少ない。そんな風潮に歯止めをかけ、現代アートという異物を混入することでこの町の持つ歴史性や、日本的美意識を再発見することに焦点を絞って開催されるビエンナーレ。その明確な理念が様々なもを結びつけ、それぞれを活性化させる不思議な空間を創り出すことに成功したその独自性は、越後妻有や横浜の成功体験を模倣しようとする昨今のアートフェスティバルブームの中、特異な輝きを放っている。行政的支援もなく、人的、財政的の苦しさの中、これほど独自のアートフェフティバルが10年の歴史を刻んできたことが何よりの驚異であり、アートやこの国の未来がまだ捨てたものではないと思わせる実例の一つになり得ると思う。

BIWAKOビエンナーレ2010 ウェブサイト
BIWAKOビエンナーレ2010のtwitter
ウィキペディア 瀬戸内国際芸術祭
ウィキペディア あいちトリエンナーレ
ウィキペディア 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ
ウィキペディア 横浜トリエンナーレ
杉浦慶太さんのtwitter
田中真吾さんのプロフィールが掲載されたstudio90のサイト
寺田忍さんのウェブサイト
寺田忍さん+真木三起さんが紹介されたBIWAKOビエンナーレのページ
石田歩さんが紹介されたBIWAKOビエンナーレのページ
ヴェラ・ロームさんが紹介されたBIWAKOビエンナーレのページ
藤居典子さんが紹介されたBIWAKOビエンナーレのページ
竹田直樹さんが紹介されたBIWAKOビエンナーレのページ
青木美歌さんのウェブサイト
フン・チワンさんが紹介されたBIWAKOビエンナーレのページ
阿曽藍人さんが紹介されたBIWAKOビエンナーレのページ
ウィキペディア 近江商人
アマゾン 青木美歌さんの作品がジャケットとなったLUNA SEA『COMPLETE BEST』

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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