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「自分だけの答え」~京都造形芸術大学・大瓜生山祭、椿昇さんが参加したトークショーを聴いて~

 昨年まではこの時期と11月に分かれて行われていた京都造形芸術大学の学園祭が、大瓜生山祭(だいうりやまさい)として統合され9月19、20日の2日間開催されました。初日には副学長の秋元康さんが総合プロデューサーを務めるAKB48が開学20周年を期に作られた校歌のお披露目に来学し、大混雑をもたらすなど様々なイベントが行われたようです。そんなイベントの中で、学園祭パンフレットにも掲載されていなかったトークショーをtwitter(ツイッター)上で見つけたので行ってきました。予定では0000(オーフォー)など若いパネラーが参加したトークショーだと思っていたけれど、遅れた到着した会場には、かねがね熱いアーティストだと聞いていた椿昇さんも参加しており、聴衆に向け力強いメッセージを送っていた。大瓜生山祭1

8月上旬に行った瀬戸内国際芸術祭で直島に滞在していた時、早朝のフェリーターミナルでたぶん椿昇さんだろうという人物を見かけてはいたが、声まではかけれなかった経験を除けば、初めて見る椿昇さんは、一回り以上違う若いパネラーの誰よりもエネルギッシュな人だった。このトークショーの直前までマンガミュージアムで開催されていた「非実在青少年」に関するシンポジウムに行っていたため、約30分遅れで話を聴くことになったが、その時話されていた「美術館問題」でも、金沢21世紀美術館を例に挙げながら、「特殊な絶望感があって人が来ているのに嘆いている。その原因は作品を読み解く観客がいないことからきている」とパネラーの0000との対話から考察。

さらに「ハードにはお金がいくが、ソフトやソフトを更新していくことにお金がいかないことが日本の敗北につながっている」と現状を分析。しかしその中で中国や韓国での仕事の経験や、現在、日本で起きている様々なアートの動きから、「いままでと全然違うフェイズが始りつつある。クリエィティブに考えて、システムが変わったら、新しいユーザーが瞬間的に立ち現れてくる「総転位」の可能性がある。そしてそれしか脱出口がないから、学内展でプライスリストをつけたり、『ねぶた』の現場でみんなが死に物狂いでやった達成感を味わうことで、(学生を)ギャラリーに渡す前の段階まで育てたい」と現在行っている学内活動を説明。大瓜生山祭トーク画像

そこからは、「学内で収まっていることを外に出して地域とのコミュニケーションをしていくことを考えている」とのビジョンを語り、「アートを支えているものは言語やシステムでは追いきれないもので、そこにあるではなく、いるという気がする。闇雲に動くのじゃなく、精緻にピンポイントで動いていくことが大切」と経験に根ざした意見を披露した。一人のアーティストとして若い世代にその経験を伝えようとしている椿昇さん。前日のAKBメンバーたちの話題にも触れながら、「お互いが追い落とし合いのゲームをしてて血と肉の匂いがした。一人ひとりのダンスやトークも凄いし、成功するシステムとしてのおぞましさと凄さを感じた」と独自の視点から彼女たちが「ゲーム世代」に支持される理由を分析した。

「君たちが何をしようとして、何を疑問に思っているのかを自分の言葉で伝えて欲しい」と若い世代のアーティストに望むことを語った椿昇さん。聴衆からの「『ねぶた』制作の真意とは?」という質問に、「それは自分がその場にいる中で探すもので、誰かが教えてくれるものではない。結局は自分が世界をどう見て、どう考えていくかを先人の考えを引用しながら、頑張って自分が死ぬほど考え抜くしかない。それでも答えは出ないけれど…本を読んだり、作品を創ったりしながら君だけの答えを探し求めていけば、誰かがそれについていくことになる。僕らは一人で生きていく仕事だから、友達探しをするなら他の仕事を見つけた方がいい」とアーティストとしての心構えを語った。大瓜生山祭ねぶた画像

最近はセネガルなど、地元の人々との交流の中での制作も行っている椿昇さんは、作品を提示していく中で変化した人々の対応を振り返り、「アートは人と人がつながっていくもので、だから関わりができれば世界中に行き場所があって、どこでても生きていけるアーティストって凄いよ。ここに来ているみんなもアートを信じている奴らで、それは素晴らしいことだと思う」とアートへの思いを語りトークショーを締め括った。今、世界的に現代アートの価値が高まっている理由の一つは、これまでの価値観からの転換を迫られた時代に、一人の人間が全身全霊を賭けて提示する「自分だけの答え」に対し、多くの人がその「答え」に何らかの可能性を感じているからだと思う。荒野を分け入るアーティストたちのそれぞれの道の先に、より豊かな世界への鍵がきっと隠されているのだと思う。

ウィキペディア 椿昇
椿昇さんのウェブサイト
ウィキペディア 京都造形芸術大学
京都造形芸術大学ウェブサイト
ウィキペディア 秋元康
ウィキペディア AKB48
0000Gallery ウェブサイト

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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