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「新たなリアル」~今、アートと社会の中で何が起きているのか~

 この夏、東京、京都、瀬戸内のアートやアートに関連したイベントを観て来た中で、考えたこと、見えてきたものについて、今から書いてみたい。本来なら、それぞれのイベントについて一つひとつ詳しく説明していければと思うのだけど、そうすると、細部は見えてきても、その全体像は失われてしまうようなところがあるので、今回はあくまで全体像と核心に絞って書いてみたい。AERA画像2

最初の違和感は、もう6、7年前のことになると思う。学生時代から読んでいた朝日新聞出版発行の「AERA」という雑誌が、地方の新聞社で働いている自分の日常とは全く乖離しているように感じられ、それ以来すっかり目を通さなくなってしまったことがあった。またそれまで時間があれば熟読していた新聞も、同業他社で働いている身でありながら、いやあるからこそ、そこに自分にとっての切実な問題や物事の核心について一切書かれていないように感じ始め、目を通さなくなっていった。

今、振り返って何がそうさせたのかを考えると、結局、新聞や雑誌やテレビで報道されている事実は、その報道機関の人々にとって関心があるものでしかなく、彼らの感じるリアリティーと自分自身のリアリティーには大きな溝があるということだった。そしてそれを単純に図式化すると、彼らの信じているものは、これまでの社会の延長線上にある価値観や大義名分であり、自分が探しているものは、自分の日常生活の小さな空間の中で活かすことのできるささやかなルールや価値観なのだと思う。阪神淡路大震災1

個人的には「95年断層」と呼んでいる阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が起きた年以降、少なくとも自分の身の回りの日常感というものは、それまでの「高度経済成長」的一体感のあった社会の姿から、大きく変容してしまったのではないかと思う。それはたとえば2000年代中盤に起きた社会の様々な面での二極化の中で、「ロストジェネレーション」と言われる自分たちの世代が感じてきた多くの喪失感や、上の世代から強要されるこれまでの価値観に対する違和感の中で形づくられてきたものなのだと思う。

そんな違和感を感じ続けてきた中で、自分の価値観とは違うかもしれないが、無数の異なる価値観を提示し、それをそのまま許容する空間だと感じたのが「ネットの世界」と「アートの世界」だった。特に「アートの世界」は、学生時代から美術館や博物館を巡り、後期ルネッサンスから90年代前半までの美術の流れを理解していただけに、その先のにある「アート」の現在を追っていくために、幾つものギャラリー巡りをすることが楽しくはあっても、大きな苦労とはならなかった。梅ラボ画像1

また優れた若いアーティストの作品の中には、「今」という時代に対する鋭い批評性や、意識、無意識は別にして、「今」という時代のリアリティーが鮮明に現れており、テレビや新聞の中に見る自分にとって違和感の多いリアリティーとは異なる「今」を見ることができたことも現代アートに関心が向いていった理由なのだと思う。そのリアリティーはきっと上の世代からみれば、とても作品とは言えないようなチープさやジャンクさを含む中途半端な作品に見えるかもしれないけれど、そんな作品の中にこそ、今の時代の痛さや切実さが見受けられたのだと思う。

この夏、東京で見た3つの梅沢和木展にあったアニメキャラクターのパーツを再構成した作品や、その作品の中に使われた赤、青、黄色の蛍光色のカオス状況を見ることによって気づかされる自身の中の心の空洞。そしてそれにいつまでも対峙させられてしまう不思議な感覚。作品のパーツと化したアニメキャラの瞳に感じられる虚ろな虚無感や、逆に生まれてくる眼力(めじから)のようなものには、今の時代を生きる若い世代の感じている「切なさ」や「感覚のキレ」のようなものが表れているように思えてならなかった。福居伸宏画像1

また清澄白川の小山登美夫ギャラリーで見た福居伸宏「アステリズム」展では、デジタル写真表現というものの、シャープさや鮮明さを武器にしてアクリル板上にクリアに映し出された夜の無人の東京のダークさや廃墟感の中に、東京の「今」が映し出されていると思わせる力があった。汚れやくすみが必要以上に浮き出てしまう画面の中で、だからこそ新たな建物に使われた金属素材のシャープさや、植物の生命力といったものが強調され、両極端の存在によって生じる朽ちた感覚と鮮度の共存が、時代の混沌や「新たな世代の登場」を予感させすにいられなかった。

8月に開催された「京都芸術」と「わくわく京都」では、若いアーティストやその周辺で新たなアートシーンを創ろうとしている人々が、互いの立場を越え、それまでの年齢や社会的地位といったヒエラルキーによるピラミッド型の組織ではなく、アートの現状を変えていこうという共通認識を基盤として自分たちにできることをやり、フラットで自由な「ゆるやかな繋がり」を生み出し、低予算でも、アイデアと情熱を結集してイベントを成功に導いた。それらの手法は今後アートの世界だけでなく、様々な分野に活用できるもののように思われた。瀬戸内国際芸術祭1

そして関東や関西を中心とした国内だけでなく、韓国を始めとするアジアやヨーロッパも含む世界中から若い世代を中心としたアート好きが集った瀬戸内国際芸術祭には、芸術と自然との融合や、アートによる地域の再生や人々の交流といった、これまで交わりの少なかったもの同士が交わることで生まれるエネルギーが、動くに動けなかったものたちを動かし、新たな価値を生み出す力になることを身を持って体験できる機会を与えてくれた。

2010年という「ゼロ年代」が終わりを告げた最初の年、アートやネット上という価値観の多様度の強い場所で起きている独特の熱量を持った動きの原動力となっているのは、これまで変えることのできなかった現実を、古い価値観ではなく新たな価値観で更新しようとする動きではないのだろうか。「失われた10年」という10年以上続いた閉塞状況を打破できる機会が様々な場所で同時多発的に起きていることは素晴らしいことだが、ただ、その価値観やリアリティーの更新というものが、この国が直面している「衰退」の結果生まれてきた「貧しさ」や、デジタル技術の発達とその影響を多大に受けてきた「デジタル第一世代」の出現を待たなければならかなったことは、彼らより上の世代にとっては恥ずべきことではないのだろうか。

ウィキペディア 福居伸宏
梅沢和木(梅ラボ)ウェブサイト
梅ラボ(umelabo)のtwitter
京都芸術ウェブサイト
わくわくKYOTOプロジェクトウェブサイト
ウィキペディア 瀬戸内国際芸術祭
アマゾン 『AERA Entertainment-まるごと一冊海外TVド―海外ドラマはこんなに面白い!』 (AERA Mook)
アマゾン 『美術手帖6月号増刊 瀬戸内国際芸術祭2010公式ガイドブック』

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Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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