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「忍び寄る悪夢」~兵庫県立美術館コレクション展・束芋『dolefullhouse』(ドールフルハウス)を観て~

 京都のアート巡りの中で知った神戸で開催されるアートフェア、神戸アートマルシェのリサーチのため久しぶりに訪れた神戸という街。ホテルの室内に展示された作品の中には良作もあり、それなりに面白かったのだけれど、その日最大の収穫は、ついでに巡った兵庫県立美術館のコレクション展で観た束芋さんの『dolefullhouse』(ドールフルハウス)という作品だった。兵庫県立美術館外観

横浜美術館から大阪の国立国際美術館へ巡回してきた『断面の世代』も一通り観て、何か言葉にできない独特の不安感や後味の悪さを感じてはいたが、そこから先にもう一つ突き抜けるものがなく、何かを書こうとまでは思わなかった彼女の展示。ヴェネチア・ビエンナーレの日本館出品作家に選ばれたというニュースの直後だっただけに、同世代のトップランナー的アーティストとしてはもう一つ物足りなさを感じていた印象が、今回の『dolefullhouse』(ドールフルハウス)を観たことで完全に吹き飛ばされた。

『水木しげる妖怪図鑑』で賑わう3階展示場とは違い、2人しか人がいない2階フロアーの第6展示室の最奥の空間を区切って流されていた映像作品『dolefullhouse』。時間があるからまあ観ておこうと全く期待せずに観た映像は、BGMもなく、西洋風の空っぽのドールハウスに淡々と家具類が並べられていく地味な作品だった。ドールハウス画像1

しかし、音やアングルの変更はなくても不思議と最後まで見れてしまうのが束芋さんの作品。6分30秒の映像が終わり、エンドレスに編集されていることを確認してその空間を退出した時には、それほど印象に残る作品とは思わなかったが、自宅に戻る電車内や、帰宅後の室内でぼんやりしているとふとあの作品について考えてしまう自分がいて、一日たった今では、この作品についてはどうしても書いておきたいという気持ちにまでなっている。

この作品の何か自分をそこまで突き動かすのかを考えると、やはり束芋さんと同世代の、いわよる団塊ジュニアと呼ばれる世代に刻印されたどうしようもないほどの傷跡がそうさせるのたと思う。そしてそれは戦後60数年という歴史を経てきたこの国の今を見ていくためには決して無視することのできない社会的傷跡なのだと思う。断面の世代ちらし

束芋さんが処女作から一貫して「家」というテーマを作品に多く取り扱っていることは、たぶんこの国というもののありようを提示するためにはとても有効なモチーフなのだと思う。現在の孤立した都市型の社会では失われつつあるけれど、本来、この国には長い歴史を通じて「家を守る」とか「お家のために」的な集団的構造を大切にするメンタリティーが存在するのだと思う。

戦後、そんな日本的な「家」が欧米文化の流入により文化住宅的、分譲マンション的な「家」に変化していく中で、人々はいわゆる「三種の神器」(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)や3C(カラーテレビ・クーラー・自動車)といった製品を購入し、空っぽだった家に少しずつモノが収められていく。映像はそんな社会の縮図を見せるようにして空っぽだった「ドールハウス」にも様々なモノが配置されていく。三種の神器テレビ

少しずつモノが増えていく「ドールハウス」ではあるけれど、そのモノが増えていくのと比例するように、作者視点から伸びてきて、それまでモノを置いていた手が「かゆみ」を感じて皮膚を掻いたり、窓から謎の蛸が出現する回数が増えていき、モノが順調に増えていた状況が少しづつ変化していく。それはまるでバブル経済崩壊前後の様々な問題を抱えたこの国の肖像でもあるかのように。

侵入してきた蛸の足がついには「ドールハウス」全体に絡みつき、独自の生命体として鼓動を刻み始めた頃、それと呼応するように「かゆみ」は激しさを増し、ついには各部屋の窓から手首が侵入。それまで平穏だった室内は破壊され、壁に開いた穴から大量の水が室内に流れ込み、全ての部屋は再び空っぽとなってエンドレスに映像は続いていく。同時多発テロ画像1

その映像に写された世界は、あくまで作家個人のアトピー性皮膚炎を患った体験を基にした唐突にやってくる災厄によって掻き乱される「ドールハウス」の姿に見えるかもしれない。しかし、その姿にバブル崩壊以後の地下鉄サリン事件や阪神・淡路大震災、9.11同時多発テロやスマトラ島沖地震などの突発的に襲い掛かる理不尽な「悪夢」に思いを重ねると、そこには近い未来のことさえも思い描くことの難しくなった世界の今が映し出されているように思えてならない。

高度経済成長という「神話」が終わりを見せて以後、この国の未来は様々な災厄に翻弄され続け、特に10代後半や20代前半にその変動を身にしみて感じ続けてきた世代にとってはその後の「失われた10年」という長いループ状況と、エンドレスに編集された『dolefullhou
se』という作品が繰り返すループ状況との類似点を思わずにいられなくなる。ただそれが異なるのは現実はループの中で確実に歳を重ね、劣化していかざるおえないということを除けば。束芋挿絵集『悪人』

いわゆる「ゼロ年代」という時代が終わりを向かえ、twitter(ツイッター)やUSTREAM(ユーストリーム)という新たなツールの登場によって初めて、この国はこれまでの閉塞感やループ状況を抜け出せる可能性を手に入れたように思う。しかしその可能性を変化に結びつけるのはあくまで人の力であり情熱であることを考えると、再び「デフレスパイラル」的なループ状況に陥らないためにも、戦後日本の歴史が刻まれた『dolefullhouse』(ドールフルハウス)という作品に向き合って過去を振り返る意味はあるのだと思う。

束芋さんの『dolefullhouse』が2010年11月7日まで展示されている兵庫県立美術館のウェブサイト
大阪の国立国際美術館で9月12日(日)まで開催されている『束芋 断面の世代』展のページ
ウィキペディア 束芋
ウィキペディア ヴェネツィア・ビエンナーレ
ウィキペディア 三種の神器(電化製品)
ウィキペディア バブル景気
ウィキペディア 地下鉄サリン事件
ウィキペディア 阪神・淡路大震災
アメリカ同時多発テロ事件
ウィキペディア スマトラ島沖地震 (2004年)
ウィキペディア デフレーション
アマソン 新聞連載された小説の挿絵を収録した束芋『悪人』

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Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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