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「お楽しみ箱としての『家プロジェクト』」~瀬戸内国際芸術祭2010「直島」を巡って~その2

 公式ガイドブックの印象では小さな島のように思い込んでしまうけれど、実際の「直島」は夜10時まで開いているサンクス(コンビニで最近できたらしい)や、中学までを一まとめにした巨大な学校施設があったりと思っている以上には大きな島だと感じられる。宮ノ浦から本村地区へ自転車で移動しながら、そんな風景を眺めていると、知らぬ間に本村集落内に入っており、慣れるまでは入り組んだ集落内で6つの「家プロジェクト」のある場所を探していくのは難しい。本村猫

そこで、いかにも地元の人といった年配の方か、ガイドブックを手にアート巡りをしている人に道を尋ねることになるのだが、そんな人々と自分の中に、芸術やアートに対する共通のつながりのようなものが感じられ、気軽に話しかけられるし、とても親切な答えが返ってきて楽しい。場所を教えてもらい、最初に行った「碁会所」はいまいちだったが、次に行った「石橋」という製塩業で栄えた家を改築した施設は凄かった。

ベネチア・ビエンナーレで優秀賞を受賞し、よく講演を聴きに行く京都造形大の学長である千住博さんが空間構成をされた「石橋」は、入ってすぐの母屋はそれほどでもないのだが、そこから回り込んで行ける蔵の中は凄かった。暗くひんやりとした蔵の中に浮かび上がってくる巨大な滝。全長15メートルの「ザ・フォールズ」は千住博さんの代表作(展示品はリピート作)らしく、テレビ画面で見たことはあっても、実物の迫力は圧倒的。杉本作品1

外から響く蝉の声を聞きながら、暗闇に浮かび上がる滝を見ていると、日常の時間感覚がズレはじめ、なにかとても遠く大きな時空とつながったような不思議な感覚にとらわれていく。目を閉じてその感覚に身を委ねていると、ひんやりとした清涼感と蝉の声、さらには自分の体の揺れのようなものが交じり合い、とても静かな心持ちになってゆく。

そんな不思議な時間が流れ始めてから観ていく「家プロジェクト」は、美術館で見る作品とは違い、外に開いた作品となっている。宮島達男さんが島民たちと共同制作を行い、水中に小さな宇宙を表現したような「角屋」のカウンティング作品。大竹伸朗さんの「はいしゃ」や杉本博司さんの「御王神社」は、場やモノの持つエネルギーを作家の個性によってまとめ上げた力のある作品となっている。(きんざは未見)南寺

そしてこの「家プロジェクト」シリーズで最も強い印象を受けた「南寺」は、建物を安藤忠雄さんが設計し、内部にジェームズ・タレルさんの作品が設置されたもの。以前に寺があった場所ということで名づけられた「南寺」という名称だが、中の作品にも、善光寺などにある戒壇めぐりに極めて似た宗教的な雰囲気があり、真の暗闇の中の「無明感」と視覚が生み出す錯覚がリアルに体験できる作品となっている。

それぞれの「家プロジェクト」は過去、その場所にあった歴史的な場の力を利用して、一度は廃れてしまった「家」に新たな命を吹き込むことに成功している。それを瀬戸内国際芸術祭や全国で盛んに開催されだした地域おこしのアートイベントの現状と照らし合わせてみると、様々なほころびを露呈しているこの国という大きな「家」を芸術やアートの力で再生させようとしているようにも見え、そこに何かしらの突破口があるのではないかとも思えてくる。
その3に続くその1に戻る犬島の記事へ進む

ウィキペディア 千住博
千住博さんのウェブサイト
アマゾン 『千住博の滝』
ウィキペディア 宮島達男
宮島達男さんのウェブサイト
宮島達男さんのtwitter
ウィキペディア 大竹伸朗
ウィキペディア 杉本博司
杉本博司さんのウェブサイト
ウィキペディア 安藤忠雄
安藤忠雄さんのウェブサイト
ウィキペディア ジェームズ・タレル
ウィキペディア 善光寺

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阿部和璧

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現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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