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今なぜ日本画Ust(ユースト)なのか

 GEISAI14の実況以来、村上隆さんが行っているUst(ユースト)生放送。「祭り」として多いに盛り上がったカオスラウンジの放課後討論会や、台湾からの熱気に満ちた生中継。その中で今ひとつ盛り上がりに欠けたのが「日本画はどこへ行く」と題されたいわゆる日本画Ust。ではなぜそれが盛り上がらなかったのか。また村上さんは一体何を目指しているのかを自分なりに考えてみたい。日本画のキキ

このUstを見た後、あくまで個人的印象として感じたことは「日本画」という存在は、すでに埃をかぶり、押入れに仕舞い込まれたジャンルではないかということだった。あいまいな自分語りに終始した芸術系大学出身者たち。岩絵の具やにかわといった素材の魅力を妄信するあまり、時代性や芸術本来の自由さを失った現状。

もし彼らの周囲に他者性というものがあれば、きっと彼らはその他者を通じて自分の今ある姿を認識できたかもしれない。しかし周囲に本当の事を言ってくれる人はなく、「日本画が好きだから」という以上に掘り下げることもできない仲間たちと、閉鎖された空間の中で馴れ合っている。

そんな印象が最後まで付きまとい、フラストレーションが溜まる一方だった放送は、結局何の進展もないまま終了。そのもやもやとしたわだかまりは、いつまでも心に残り続けた。なぜあの特異な芸術的嗅覚を持つ村上さんが、今になって日本画というジャンルを取り上げたのかという疑問と共に。

放送内で再三語られた「君たちはもったいない」という言葉は、村上さんの嘘偽りない言葉なのだと思う。高い技術を持ちながら、その出力方法がズレているために美術の世界から離れていかさるおえない人々。他者性や時代性と格闘しながら制作すれば、より多くの人々に芸術の素晴らしさを伝えることができるのにと。

日本の美術界では、決してメインストリームにいた訳ではなかった村上さんにとって、高い技術力を持ちながら、それを活かしきれずに消えていく若い才能を惜しむ気持ちが強いのだろう。特に近年、西洋の文脈に頼らない、日本独自の価値観を世界に発信していこうとしているのだから。ゴッホ『星・月・夜』

「見る人に喜びを与える作品を作る」ことは果たして「才能の切り売り」なのだろうか。自分は満足しても人に満足を与えることのできない作品は本当の芸術と言えるのだろうか。確かにゴッホや幾人かの不遇な芸術家のように、その死後作品が認められた作家もいる。しかしもしそうなりたくなければ、世界と向き合ってもう一歩踏み出しても良いのではないか。

多くの人が芸術に親しみ、より身近に芸術を感じるためには1人の天才しかいない世の中よりも、優れた10人の才能が多様な作品を生み出すことの方が大事だろう。村上さんが言う「20年で6000人以上いる日本画出身の卒業生で百姓一揆を起こそう」というのはそういうことなのだと思う。

Ust(ユースト) 日本画はどこへ行く 再放送
Ust(ユースト)日本画はどこへ行く 事前会議
ウィキペディア 日本画
ウィキペディア 村上隆
アマゾン 『キキ ぬいぐるみ : 村上隆』

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阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
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