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「決断の先にあるもの」~ソフトバンクアカデミア第2回戦略特別講義「意思決定の極意」孫正義さん講義を聴いて~

 日ごろは現代アートの新たな動きを追っているこのブログで、なぜ「光の道対談」や「孫の2乗の兵法」といったアートとは関係ない孫正義さんの講義を紹介するのか。その点については自分でも色々と考えてきましたが、今回、この文章をまとめようとあれこれ考えていくなかで、明確になってきた気がする。それを一言で言うと、孫さんが目指す、「情報革命によって人々を幸せにする」という考えと、このブログが目指す、「アートの多様なの可能性を紹介していく中で、人々の価値観を豊かにし、多様な価値観を認め合える社会を築いていきたい」という考えに共通の基盤があるからなのだと思う。今回の戦略特別講義では、「意思決定の極意」として、孫さんがこれまで経営者として様々な局面で行ってきた決断を振り返りながら、そこに込められた意味を読み解くというもの。30の選択を例にした孫正義さんの決断の先にあるものを見ていきたい。ソフトバンクアカデミア公開講義

「決断とは一方を選択し、もう一方を断ち切ることである」という一見、当たり前でありながら、意外と忘れがちな言葉にハッとしている内に始った孫さんの講義。「意思決定はリーダーに求められる資質であり、成功要因である」と語る孫さんのこれまで経験してきた30の意思決定をケーススタディーとして紹介しながら進められた講義は、かなり赤裸々なものだった。聴衆と共に30の設問の中から2者択一をしていくという形式で行われた設問の中には、ハドソンという企業との独占契約のための多額の資金を要求された時の話や、今でも「思い出したくない」という部下の裏切りや離反の話など、聴いている方がここまで話していいのだろうかと思うほどのものが幾つもあった。

孫さんがまだネットに出会う前の設問には、経営者としての一般的な道義やルール的な話が多かったが、一度ネットやITという業態に出会ってからの型破りさには、今のソフトバンクを知っていても本当に大丈夫か?と思えるほどの選択が続いていた。出版事業と競合するネットでの情報発信に収益の見込みも無いのに飛び込んだり、マイクロソフトやまだ創業間も無いYAHOO!(ヤフー)アメリカへの巨額の資金の投入ぶりは、普通なら常軌を逸しているとしか考えられないほどのもの。しかし、その常道を踏み外した決断の結果が、今のソフトバンクを生み出したのだから、経営者としての目の付け所が常人とは全く違っているのだと思う。そう考えると、今回の後継者募集で30年後の200兆円企業を作り上げることのできる人物など、孫さんと同じレベルかそれ以上に常道を踏み外した決断ができる者でなければ絶対に不可能だと思う。『事を成す 孫正義の新30年ビジョン』

ネットという事業に出会った孫さんの決断は、「時間も労力もお金も99%インターネットに集中する」という、極めて偏った意思決定をしていく。総額5000億円で買った3つのアメリカ企業や、スカパーやあおぞら銀行などを、戦略的事業であるブロードバンドの資金不足を解消するために、損を承知で売却。その資金をネット事業へ4年間投入し続けた時期に起きたネットバブルの崩壊。20兆円の価値だったソフトバンク株は一気に100分の1の2800億円になったのだという。そしてその時の株主総会では、「嘘つき!ペテン師!泥棒!」と非難の嵐が吹き荒れる中、6時間休憩なしで質問に答え続けた孫さん。最後はその姿に打たれた会場の3分の1の人々が涙を流し、あるおばあさんは「主人の残してくれた100万円の遺産の全部ソフトバンク株に投入し、10万円になった。だけど私には悔いはありません。今日あなたの話を直接聴いて、私はあなたの夢に賭けた。本当に良かったと心からそう思いました」と言ったのだという。

「割れんばかりの拍手をもらい、今でも鮮明に覚えている」という株主総会が行われた時期、孫さんが「生きるか死ぬか」の勝負を挑んでいたのがブロードバンド事業。知識も経験もノウハウもない中に飛び込んだ理由は、「この国をブルードバンド先進国にする!」という志だった。その戦いの中には国内市場をほぼ独占していた企業との争いや、殺到した申し込みへの対応の遅れ、情報漏えいへの対処といった様々な苦難の連続だった。しかしその結果が2009年の統計による世界一速く、安いブロードバンド環境を提供できる国という状態をもたらした。さらに現在のソフトバンクの中核をなす携帯電話事業の買収や、携帯事業での顧客認知度やブランド力のアップも狙ったプロ野球団の所有など積極的な意思決定を次々と行っていった。孫さんUST画像3

現在行われているソフトバンクアカデミアによる後継者の育成を含め、情報通信企業としての道を歩みだして以降の孫さんの決断は、一見常識外れのように見えて、実は大きな目的を達成するための一つの道筋であることに気づく。「情報革命で人々を幸せにする」というその目的を可能にする、ネットやウェブの技術。その技術がつなげるこれまで出会えなかった人々の思いや発想によって、世界中の人々がより豊かに幸せに生きる世界を築くこと。全てはそのための決断であり、そんな志が作る未来のビジョンを明確にすることが、結果的に「意思決定の極意」の最も重要な柱になるのだと思った。

ソフトバンクアカデミア 公開講義アーカイブ
ソフトバンクアカデミア 後継者公募申し込み先
ソフトバンクアカデミア公開講義「意思決定の極意」書き起こしPart1
ウィキペディア 孫正義
ウィキペディア ソフトバンク
孫正義さんのtwitter(ツイッター)
アマゾン 井上篤夫著『事を成す 孫正義の新30年ビジョン』


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プロフィール

阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

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