スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - スポンサーサイト

模索するアートの現場、または世界と繋がる感性

 一度観て、その良さを全く見抜けなかったものの中に、実は模索や実験の成果が込められている。12月18日に児玉画廊(Kodama Gallery)京都で行われたイグノア・ユア・パースペクティブ10のトークセッション「美術の新潮流?その解釈と論理の構築を目指す為の意見交換」というイベントは、今の京都の、そして3名の若手作家の内面の隘路を通り抜けた先にある、世界のアートシーンとの共通項を感じることができた極めて刺激的なイベントだった。あまりの先進性に上手く整理がつかなかったこのイベントを今さらながら紹介したい。児玉ギャラリー外観1

壁にかけられた透明なレインコートのようなものを当り前のように「これはつばめです」と言われた時はさすがに言葉を失った。12月25日まで開催中の3人の展示作家中、唯一の女性作家・和田真由子がそう告げた時、会場にいた30名ほどの聴衆のほとんどは、そう思ったのではないだろうか。すでに彼女の作風を知っている人は別にして、少なくとも一度作品を観て、何も見て取れなかった自分には、もしかして彼女はちょっと常軌を逸してるのかと思ってしまった。

しかしその後、微妙に分かりづらいながらも、「どういう風に出力するのか、理想に近いかを考えていく中で、背景はいらないというのがあって、絵の要素をを試す場として立体を作っている」という説明を交えて解説されていくと、そこにはストンと腑に落ちていく妙な説得力があった。最初に作品紹介をした関口正浩のジャマイカの国旗のような作品も、画面は皮膜状に加工した油絵の具を貼り付けて構成したものだと聞き、「直接筆で描いていくのが怖いというのがあって、何とか間接的にキャンバスに触れられないかというのがあって」と言われると、その手法の面白さと手数の少なさが意味性を帯びてくる。児玉ギャラリー展示画像1

最後の説明者となった貴志真生也に至っては、チープな素材を使った大型のインスタレーションの2つとも、その意味はよく分からないのだが、「観てもらった人に何かを伝えたい訳じゃなくて、大学で研究計画書を書かなければならない中、書いた言葉が作品に反映されず、内実が伴ってないことが苦痛だった」という過去を説明。直前に迫った卒業制作の期限に対応した、「大したものはできないから今ある材料で作ろう」という吹っ切れた状態が、「普段作品を作るにあたってのルールがすっぽ抜け、衝動と切実の直線ルートができあがってこういうものができた」と現在のスタイルが生まれた経緯を語った。

今回のトークセッションの進行を務めた中西博之(国立国際美術館学芸員)は彼らの制作へのそれぞれのアプローチを、「既存の枠組みに距離を置き、思考実験の段階よりは先に行っている」と的確な言葉で評価。作家たちの感覚的な言葉や作品から聴衆に届く言葉を引き出していく姿勢にはかなり好感が持てた。しかし、和田の「自分の持っているものを人に見せるために物質に体を与えたい」とか、貴志の「作品と見えなかったらゴミに見えるぐらいがちょうどいい」というような、これまでの作品定義とは異なる制作姿勢に対しては、具体的な言葉を引き出すことに苦戦。そこからトークが発展していくようにと聴衆からの質問を募った。児玉ギャラリー展示画像2

最初の質問者が、「なぜ今言葉にできない内面的な何かを作品化することに真摯に向き合っているのか?」という質問をすると、関口は「心的なもの以外にも、自分の体を基準とした構築的なものを作っていて、美大とかの学生が作っているものも自分の体をスケールにしたものが多い。みんな身体的なものが欲しいという気がしている」と回答。和田は「ビジョンじゃなく、プロセスを目指してやっている。こういうのが見たいと思って作っていると思うけど、そこが一番大事ではない」。貴志は「ルール作りができているのかなというのは思う。なぜそうなるのかを追求していきたい」と答えた。

3名の作家たちは、それぞれ「身体」、「プロセス」、「ルール」というキーワードを用いて、自己の感性に忠実に、既存の制作の「プロセス」を疑い、「身体」的な感覚を優先した新たな「ルール」を模索する挑戦を行っているのだと理解できた。そのあまりの革新性に、次の質問者も無かった中、会場に居合わせた「清水さん」という人物に話が振られた。その「清水さん」という人物は、後で聞くと同志社大学で教鞭を取り、写真新世紀などの審査員も勤める「清水穣」という人物らしく、「最初の印象は旬だなと思いました」という感想を述べ、話し始めた。永遠に女性的なる現代美術

「2010年のバーセルでは面白いシフトが起きていて、1995年から2007年の水戸芸で展示されたマイクロポップや、中国の超絶技巧の作品が見事に消えて、ポスト・コンセプチュアル、オルタナティブ・モダンといった1910年~30年の抽象絵画の起こりのような時代に作家たちが戻った。フレームとコラージュという2大キーワードが流行となっていて、反動的なモダン、モダニズムというものを刈り取った後に生えてきた余波的な現在を今回の作品もよく表している。大昔の蓮の種を発掘して花開かせるように、1910年ぐらいにあった遺伝子を2010年という土壌の中でどう培養するかという意味ではロンドンやニューヨークと共振している」と語った。

今後の課題についても10年後を見据えるべきだと提案し締め括った「清水さん」の話は、海外の事情を知ることが少ない作家であっても、時代の空気を感じながら自己の制作に真摯に向き合えば、結果的に世界の動向とリンクした状況を作り出せる可能性を示唆した点でも興味深かった。瀬戸内国際芸術祭からカオスラウンジをはじめとしたネット周辺の動きまで、様々なものがつながり、連動しはじめた2010年のアートシーンの動きは、結局のところ、より「身体」性や自己の「感性」に適した、新たな「ルール」を模索する人々が、「社会」の表面に姿を見せ始めたことの表れなのだと思う。自己の「感性」や制作の「プロセス」に真摯に向き合う若い作家たちのように、我々も既存の価値観を疑い、新たな「ルール」を模索し、その成果を果敢に提示していく時期にきているのだと思う。

児玉ギャラリー(Kodama Gallery)のウェブサイト
ウィキペディア インスタレーション
ウィキペディア 清水穣
ウィキペディア コンセプチュアル・アート
アマゾン 清水穣著『永遠に女性的なる現代美術』(知の蔵書21)

【関連記事】
ニコニコ生放送「村上隆の芸術闘争論2」における森川嘉一郎さんの実力
ウィリアム・ケントリッジさんの京都賞記念ワークショップに見る「知識人」の限界
「では村上隆さんの何が凄いのか・フィギュア編」~『芸術闘争論』トークショー@大阪を聴いて~
「更新されゆくリアリティー」~鈴木謙介さんが参加した京大11月祭公開討論「いま、大学で<学問>することの意味」を聴いて~
「場所の精霊に尋ねよ」~地域アートフェスティバルの先駆者、芹沢高志さんの講義を聴いて~
「ヤセ犬の気概」~アーティスト藤浩志さんの根幹~
「自分を超える作品を!」~森村泰昌さん徹底討論「清聴せよ!成長せよ!」を聴いて~
「悲劇が残していったもの」~「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」ジョナサン・トーゴヴニク写真展を観て~
「自分にとっての物語」~福嶋亮大さんが参加した「ネット社会の物語と『観客』」というトークを聴いて~
「極めて優れたビエンナーレ」~BIWAKOビエンナーレ2010を巡って~
楽しすぎ!「見っけ!このはな2010」~大阪で開催の2日間限定アートイベントを巡って~
凄すぎる!村上隆さんの本気in台湾
「なぜ青木美歌さんはBIWAKOビエンナーレであれほどの作品を創れたのか」
スポンサーサイト
この記事をクリップ!Yahoo!ブックマークに登録
BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - 模索するアートの現場、または世界と繋がる感性

Tag : ギャラリー トークショー 講演

プロフィール

阿部和璧

Author:阿部和璧
現代アートを中心とした美術関係について書くライターをやっています。2011年8月より東京に拠点を移し、現在は都内の地域アートプロジェクトのリサーチの仕事などをさせていただいてます。世の中にある凄いもの、面白いものに興味があり、そんなものたちについてみなさんと話し合ってみたいと思います。
連絡先はメールabekaheki@gmail.com
またはお問合せtwitterまで。

全記事表示リンク
全ての記事へのリンク(ジャンル別)

全ての記事を表示する

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
ユーザータグ

京都 歴史 アニメ 映画 秀作 動画 日本 美術 洋画 古典 講演 現代美術 傑作 ギャラリー  YouTube 舞台 京大 建築 江戸時代 探求 イベント マンガ 庭園 大阪 寺社 寺院 物理 宇宙 アート 監督 紅葉 美術展 ラブストーリー 奈良 国宝 ノンフィクション グルメ フランス 見学 時代劇 アクション 音楽 ドキュメンタリー  タイトル 世界  歌舞伎 押井守 仏像 攻殻機動隊  涼宮ハルヒ I.G 神山健治 くせになる 悲劇 博物館 鎌倉時代 東京 Production Youtube 解説 戯曲 魔術 リアル 詩情  前衛 広島 芸術 化物語  戦争 菩薩 お寺 離宮 仙人 茶室 医療 西洋美術 個展 香港 デザイン 皇室 絵画 邦画 テレビ 枕草子 漢詩 闘病 原作 宮崎駿 旅行 長谷川等伯 IG シェイクスピア 講演会 滋賀 トークショー 狩野探幽 海外文学 出会い 洋楽 日本画  祭り 荒唐無稽 中国 ジャンル   ニコニコ 二次制作 報告 肖像画 和歌 探求京大 思想 ヨーロッパ 印象派 ゲーム 手塚治虫 笑い 

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
フリーエリア
FC2 Blog Ranking 人気ブログランキングへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。